そうや京都、帰ろう! - 山龍の京都今昔物語

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着物マスター山龍が案内する「生きた京都の街模様」

京都生まれの京都育ち、「六本木は落ち着くな」「西麻布は知り尽くしとるで」などと言いながら、言葉はべたべたの京都弁……そんな山龍が案内する、生きた京都の街模様です。山龍ならではのリアルな思い出と生活感溢れる京都の街を紹介します。小難しい観光案内や、ブームばかりを追うガイドブック片手に“見て歩く”京都ではなく、五感で“感じる”京都旅行、してみませんか?

  • TEXT/小野緑
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其の36.京の下町七条通

ご存じの通り、京都の街は、平安京の大路小路の名残で、東西南北に碁盤の目のように道が通っている。京都の市街地図を開くと、東西に走る横の道は、北は北山通(きたやまどおり)あたりから、北大路通(きたおうじどおり)、今出川通(いまでがわどおり)、丸太町通(まるたまちどおり)、二条通、三条通、四条通、五条通、七条通、八条通、九条通、十条通ときて、南の端が久世橋通(くぜばしどおり)ぐらいまで、南北の縦の道は、東は白川通(しらかわどおり)あたりから、東大路通(ひがしおうじどおり)、川端通(かわばたどおり)、河原町通(かわらまちどおり)、烏丸通(からすまどおり)、堀川通(ほりかわどおり)、大宮通(おおみやどおり)、千本通(せんぼんどおり)から西大路通(にしおうじどおり)ぐらいまでが目抜き通りとして表記されている。もちろんこれ以外にも細かい道に全部名前がついていて、小路も入れるとものすごい数になる。

我々が観光客として京都を訪れて、まず覚えるのが、四条通ではないだろうか。私は、四条烏丸(しじょうからすま)、四条河原町(しじょうかわらまち)あたりが、京都の中心地だと思い込んでいたが、山龍に聞いたところ、京都の街の中心エリアといえば、堀川二条なのだそうだ。そう、二条城があるとこですね。

で、京都の玄関であるJR京都駅を地図で探すと、意外にもかなり南の端、八条通にある。あらま、京都駅ってこんなに外れにあるんだ!

「そ、外れ外れ! 京都人からするとホンマは七条より南は京都やないねん。京都駅は八条通の上やからな。東寺のある九条通なんか、昔はホームレスしかいいひんかった」

1994年に平安遷都1200年の記念事業として、地上16階、地下3階、ハーフミラーのガラスとアルミパネルを多用した超近代的ビルに大変身し、古都の景観を破壊するとか、南北を分断するとか、様々な批判を買った京都駅ビルも、しょせんこんな端っこで偉そうにしているだけだったのかあ……と、少しホッとした。いくら大御所の原広司設計のビルでも、山に守られるように建つ、数々の歴史的建造物や社寺仏閣、四季折々に表情を変える日本的な風景の迫力には、調和も違和感も関係なく、はなから相手にもされていなかったのである。

この京都駅の真っ正面七条通に、浄土真宗大谷派の東本願寺、左斜め前に浄土真宗本願寺派の西本願寺がど〜んと駅をにらみつけるように建っている。そのため、七条通のこのあたりは通称・本願寺通りと呼ばれる。このあたりは、仏壇屋や数珠の専門店、ろうそくやお線香の専門店が並び、なかなか味がある。山龍の母校である天下の平安高校は西本願寺に隣接しているので、このエリアが彼のテリトリーであったのはいうまでもない。

「七条通いうたら、東京の浅草なんかのイメージに近いな。七条市場って、正式には『京都市中央卸売市場』いうのが丹波口の駅周辺にあって、プロユースの店とか仲卸の店とかが並んでる。京都駅の近くやけど、ハイソでもなんでもないの(笑)。せやけど、俺は好きやけどな」

七条市場の横がかつての花街『島原』、その横に平安高校、その横に西本願寺という位置関係。この七条市場は、彼がいたアメリカンフットボール部のOB達がたくさん働いているのだそうだ。

「うちのOBや野球部のOBばっか。市場の仕事って朝が早いから昼には終わるのよ。で、一杯飲んでOB面して練習見にくるから、たち悪いねん(笑)。でも、OB会が部のお財布やから、キャプテンやっとったときとかは、予算の説明しに、しょっちゅう市場には行っとったで」

七条市場の近くにある洋食屋『ぱ・らんて』は、とにかく安くって量が多いので有名な店だ。このあたりに働く人達や学生に人気で、開店前の11時頃から列ができるくらい。オムライスの大きさは、地元の雑誌で何度も取り上げられている。この店も、平安高校のOBが関係しているらしい。

洋食屋『ぱ・らんて』

東京だったら浅草橋のような、プロ用の道具や雑貨を売る店が並ぶ七条市場近くにある洋食屋『ぱ・らんて』。
オムライスにコロッケとミニうどんまでついたボリュームにビックリ! オムライスも特大です。

「このあたりの店で、ウチの学校のOBに関係ない店探すほうが難しいんちゃう? 歩いてるとあちこちで“どや、調子は?”と声かけられて、うっさいねん。西本願寺の前の高岡仏具店なんかウチのヘッドコーチの家やったから、みんなでよく“爆破したろ!”とかよく言ってたわ(笑)」

まさに下町のノリである。

洋食屋『ぱ・らんて』

特大オムライスのセットは山龍が制覇。
サーモンフライの日替わり定食にはタルタルソースがタップリ。
ほかにエビフライセットも頼んで、このお勘定を見てください。

この七条通は、山龍が子供の頃に母親とよくケーキを買いに来た洋菓子店の思い出もあるそうだ。

店の名前は『メーゾン・フランス洋菓子店』。本格的な手作りのケーキを売っている店で、値段も高めだったが、当時京都では、手土産にはここのケーキというのが日常だったとか。

「あり得へんくらい甘いケーキで、それが好きやった。今でいうパティシエの帽子をかぶったおっさんとおばはんでやってて、ケーキ箱に入れてリボンかけるだけで、何分かかんねん? みたいな感じ。で、店の外に出て、見えなくなるまでお辞儀して見送ってくれたのを覚えとるわ」

ちなみに、『メーゾン・フランス洋菓子店』は、とっくに店を閉めてしまっているが、なんと店だけはそのまま残っていた。誰かまだ住んでいるのだろうか?

『メーゾン・フランス洋菓子店』

京都はパリと姉妹都市。
だからというわけではないですが、『メーゾン・フランス』のネーミングにはこだわりを感じますね。
小っちゃなお爺さんが、一人でケーキを焼いていたそうです。
「純フランス洋菓子専門店 みなさまのおみせ メーゾンフランス洋菓子店」の看板が今でもクッキリ残っていました。

そのほかにも、七条通近辺には、かつての貨物駅があった場所に、旧二条駅舎を移築したり、SLなどが展示してある『梅小路蒸気機関車館』や、京都パープルサンガの本拠地『西京極運動公園』などもある。

「七条通の鴨川沿いが京町いう、井筒監督の映画『パッチギ!』の舞台や。で、その近くの内浜いうとこに、僕が初めて振り袖の工場つくったとこがある。どっちも治外法権みたいな、アブナイ場所やけどな(笑)」

歴史の生んだ偉大な文化と、人の人情や煩悩が凝縮されたこ七条通エリアにいると、山龍がいつも以上に生き生きして見えるのは気のせいだろうか?

『ぱ・らんて』
京都市下京区西七条南依田町78-1
TEL:075-322—5708
営業期間:(月・水〜日)11:30〜15:30 17:30〜22:30 (火)11:30〜15:30
http://r.tabelog.com/kyoto/A2606/A260604/26000148/dtlrvwlst/329221/

『メーゾン・フランス洋菓子店』
京都府京都市下京区七条通西洞院西入大黒町232(営業はしていません)
http://kojitsu-kyo.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-1b41.html

『京都市中央卸売市場』
http://ja.wikipedia.org/wiki/京都市中央卸売市場第一市場

『梅小路蒸気機関車館』
http://www.mtm.or.jp/uslm/

『西京極運動公園』
http://www.j-league.or.jp/stadium/nishikyougoku/