コラム「指南」 - 山龍に学ぶ花咲ける着物道コラム

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着物マスター山龍の「目からウロコの和-ism指南」

  • TEXT/小野緑
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第19回 和装下着の未来

化石のような和装下着

Dewe(デヴェ)をご存知だろうか?

そう、かつてプッシュアップブラで一世を風靡したベルギーのインナー老舗ブランドである。それまで、「小さな胸は日本人だからしかたない。谷間なんて無理!」と諦めていた貧乳乙女に、夢と希望をもたらした、3/4カップ、背中や脇からのお肉をググッとカップの中に集めてしまう立体構造。価格は¥18,000ぐらいからと、日本製のブラに比べると恐ろしく高価であったが、無いモノがあるようになる、という奇跡のパワーに、あっという間に人気が広まった。

以来、寄せて上げるプッシュアップブラに人気が集まり、同時に、コレール(フランス製)や、リズ(ベルギー)などのヨーロッパブランドがどんどん日本に上陸した。フランス製の高級レースを使ったものが多く、機能だけでなく、見た目にもゴージャスで素敵。私もすっかりインポートモノにはまり、「本当のオシャレは下着から!」と豪語していたものだ。日本人の下着への意識がグッと上がったのは、まさにDeweのお陰だと思う。

そして、ヒップアップパンティや、最近ワコールが出した、オシャレなババシャツなど、日本の下着のデザイン性、機能性は、ここ数年で、かなりアップしてきたような気がする。

それなのに……である。
着物の下着って、どう思いますか?

「とにかく、女性の着物の下着はひどいで! 見たとたん、隠したくなるわ」

と、いったいいつどういう状況で見たのか知らないが、山龍も大いに嘆く。

私も、初めて着物を着るにあたって、着付け小物を揃えなさいと言われて買いに行ったとき、“エエッ! こんなのですか!”とひっくり返りそうになった。

肌襦袢と裾よけに分かれた二部式のもの。ワンピースになった着物スリップ。いずれも、汗の吸い取りのいいガーゼなんかを使っているのだが、とにかくおばさん臭くてダサイ。おまけに、パッケージに載っている写真のモデルは、母親の時代を思わせるような、古くさい顔立ちと立ちポーズ。これは間違いなく、この商品ができた当初に撮影したものをそのままずっと使っているに違いない。メーカーの中に、「いいかげん、写真替えましょうよ」と言う奴はいなかったのだろうか?

「着物は昭和30年代を中心に、主立った商社の扱い商品が、流通の半分ぐらいを占めていたんよ。下着はその商社の系列の下着メーカーが、片手間でやっとった。で、最終的に残ったのがグンゼ。競争相手がいいひんから、これがよく売れたんやな」

売れてるもんは、放っておいてもいいだろうという安易な考えで、デザインもへったくれもなくなってしまったのだという。そして、まるで制服のごとく、下着はこれ、腰ひもはこれを揃えなさい……と、半ば押しつけのように揃えさせる着付け教室も、洋服に関してはセンスにうるさいくせに、着物となると、それを鵜呑みにしてきた消費者も悪いのだ。

今からでも遅くない。着物の下着に、もっと愛の手を!

こんな下着が欲しかった!

そもそも着物に関しては、下着に限らず、和装小物と呼ばれるインナーのパーツ全てに、オシャレとか、素敵という概念がない、と山龍は言う。

「一応、表向きは機能を謳っているんやけど、機能的にも見えへんな」

もう、最悪である。

『サラサ デ サラサ』の女性用和装下着セット。タンクトップ型のブラと、ワンピースのセットと、ブラとカシュクール、ペチコートのセットの2種類がある。

『サラサ デ サラサ』の女性用和装下着セット。タンクトップ型のブラと、ワンピースのセットと、ブラとカシュクール、ペチコートのセットの2種類がある。

着物の業界がおしなべてそうであるように、どう見てもセンスがいいとは言えないおじさんが中心となって作っているためそうなるのだ。そういうおじさんは、着付けもできなきゃ、下着の何たるかもわかっちゃいない。売り上げベースでしかものを考えられないから、下着は昔からこういうもんだから、これでいいんじゃない? というレベルなのだ。ましてや、近年、着物の販売量が落ちているとなれば、下着なんてもんにはかまっていられないというのが本音だろう。

「地方の古い呉服屋いうのは、何でも売っとる洋品店みたいな感じが多いの。一般の下着も売っとって、グンゼやらがコーナーをボーンととって、陳列用のケースごと置いていく。そやから、小さなメーカーが入り込む余地がなかったわけ」

作り手が作り手なら、売る方も売る方。使う人の気持ちは全く無視かいな?

山龍を中心として、着物をもっとファッションとして楽しもうというムードが盛り上がってきてるのだから、小物も何とかしたいもの。

そんな矢先に見つけたのが、このコラムの第16回でご紹介した、茶道家でもある伊丹宗友さんの和装下着ブランド『サラサ デ サラサ』だった。伊丹さんはもともと『ヨウジヤマモト』のデザイナーだった女性なのだが、着物も日常的に着る方。それ故、着物の下に着る下着のあまりのダサさに我慢できず、自分で和装下着のブランドを立ち上げてしまったという、和装下着界のジャンヌ・ダルクなのである。

素材に、肌触り抜群の上質のエジプト綿や、レースを使い、デザインも、カシュクール型やキュロットパンツ、ペチコートなど、和装だけでなく、普通の洋服にも着られるものばかり。タンクトップ型の、スポーツブラのようなブラも、シンプルで使いやすい。

展示会に並ぶ商品を見たとき、“そうそう、こんなの欲しかったのよ!”と、すっごく嬉しかった。首の後ろのくりなどは、衣紋を抜いたときに見えないように、ちゃんと深くなっているし、細かいディテールに、着物を着る人の気持ちがちゃんと反映されていて、痒いところに手が届く優れものである。

セットは、こんな素敵な袋に入っている。これ、旅行のときの下着入れになります。こういうちょっとした気の利き方がうれしのだ。ユナイテッドアローズの着物売り場で売っています。

セットは、こんな素敵な袋に入っている。これ、旅行のときの下着入れになります。こういうちょっとした気の利き方がうれしのだ。ユナイテッドアローズの着物売り場で売っています。

従来の和装下着より、少々値段は張るけれど、洋服にもOKだということと、何よりも、これから着物に入門する女の子達に、全く違和感のない可愛さがあっていいと思うのだ。
間違いなく、超オススメ。

ところで、男の下着はどうなんだろう?

「男の下着はもっとひどいで。もう、何これ?ていうのしかない。だから、今回作ってもらうことにしたわ。上は深いVネックのTシャツ。下はショートのボクサータイプ!」

なんと山龍、知らない内に、そんなところまで手を回していたのか。

着物を現代のファッションとして素敵に着こなしている人たちが、着物にまつわる『???』な部分を、こうやってどんどん変えていく。

いいですねえ! そろそろ来るか、Kimono Revolution!

(2008.4.14)