山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

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  • 時事

    世界が見たくないものに蓋をしブラックボックスになっている中国経済が
    この数年、強力に推し進めている『一帯一路』という政策について
    アメリカのシンクタンク、IMF,世銀などから批判の声が上がりだしました
    これは単なる政治的状況かどうか見てみましょう

    一帯一路で援助を受けていたはずの国が、巨額の借金を抱えた上でインフラも奪われる
    そういう懸念が数か国で発生しています
    中国が推し進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」が生み出す巨額債務への
    警戒感が、ここに来て急速に広がっています
    米シンクタンクは、債務返済が困難となる恐れがある8つの国を名指しで指摘し
    債務と金利が重くのしかかり、一帯一路の負の側面が明らかになったと言いました
    これは、「代償なし」ではないということです
    「参加各国は、(中国によるインフラへの投資などを)フリーランチと
    考えるべきではない」と、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は講演
    一帯一路についてこう指摘した。「フリーランチ」とは「代償なし」「無料」などを
    意味しますが中国のそれは違うと、IMFトップが一帯一路にともなうリスクを
    公に警告しました

    スリランカ南部ハンバントタ港は2010年、親中派ラジャパクサ政権下で
    建設が始まり、建設費約13億ドル(約1421億円)の多くを中国からの
    融資でまかないました
    しかし、スリランカに重荷となったのが、中国側が設定した最高で年6・3%という
    金利です
    そもそも、計画前から財政に余裕があるとは言えず、当事国は当初から返済に
    窮するようになります
    最終的に昨年12月、港の株式の80%を中国国営企業に貸与し、リース料として
    11億2千万ドル(約1224億円)を受け取ることで合意しています
    リースという形を取ってはいるものの、貸与期間は99年間で事実上の売却
    或いは差し押さえというものです
    スリランカ側からすれば、いつのまにか港が中国の手に渡った格好になりました

    こうした手法は「債務のわな」と批判される融資の形態で、3月にはティラーソン
    米国務長官(当時)も、一帯一路の参加国が、完成したインフラを中国側に譲渡する
    事態に対し、「主権の一部を放棄しないで済むよう(事業契約を)注意深く
    検討すべきだ」と呼び掛けています

    そんな中、米シンクタンク「世界開発センター」は今年3月、一帯一路参加各国の
    債務についての調査結果を公表しました(同HPで確認できます)
    返済能力や債務の中国への依存度などについて、IMFのデータなどから
    多角的に検証したモデルです

    債務にリスクがある国とされたのが、ジブチ、キルギス、ラオス、モルディブ、
    モンゴル、モンテネグロ、タジキスタン、パキスタンの8カ国です
    報告によると、東アフリカのジブチは対外債務が2年間でGDPの50%から
    85%に増加。大半の債権を抱えるのは中国です
    東南アジアのラオスでは、最大67億ドル(7327億円)に達する鉄道プロジェクトが
    国のGDPのほぼ半分を占め、債務返済が難しくなる可能性を指摘しており
    ラオスの国債の評価は下がっています
    中央アジアのタジキスタンでは、IMFと世界銀行が債務について「リスクが高い」
    と評価し警告していますが、今後もさらなるインフラ投資が中国と共同で行われる
    予定に変更はないと発表されています
    今回の調査で「最大のリスクを負っている」と指摘されたのが、パキスタンです
    一帯一路関連プロジェクトである中国・パキスタン経済回廊(CPEC)に基づいて
    インフラ整備が進行中で、中国から約620億ドル(6兆7800億円)の融資が
    見込まれています
    調査は「高い金利が、パキスタンのリスクとなる」と警告しましたが、パキスタンは
    一帯一路の地政学的要所となるため、中国が即時反応し米国シンクタンクやIMFを
    避難するコメントを発表しました

    パキスタン国内では表だってCPECへの異論は聞こえてきません
    「中国がインフラ整備をして、働き口を作ってくれると歓迎する雰囲気がある」
    と現地の新聞も報道していますし、パキスタン政府からは、中国からの投資を
    歓迎する下記の発言が出ています
    「CPECは債務のわなではない。中国が求めるのはパートナーシップだ」
    南部カラチで23日に開催されたCPEC関連フォーラムで、アッサン・イクバール
    計画相はこう述べ、中国への信頼感を示しました
    これは、外部の懸念を意識した発言であることは明白で、これ以上、格付けを
    下げたくないのでしょう
    さらにイクバール氏は、17~18世紀にかけてアジアでの貿易を独占し
    植民地経営にも関与した東インド会社を引き合いに出し、「中国は東インド会社
    にはならない。パキスタンにとって何も恐れることはない」とも発言しています

    無論、インフラ整備などによって、生産性が向上し、経済発展につながれば
    債務返済も順調に進む可能性はあるにはあります
    しかし、「仮定をいくつか経ないと、良い結果にたどり着けないのが一帯一路だ」と
    した上で、「インフラが整うのは素晴らしいが、その背後に潜んでいるものを
    見極める必要がある」と話しています
    具体的に何をさすのかと言えば、政権基盤の弱い国への援助、贈収賄など
    短期利益を考える国への一帯一路は、ほぼ全てと言っていいほど頓挫することとなり
    所々、歯抜けになった意味のないインフラ計画で終わるということです


    | author : 山龍 | 12:00 AM |
  • 時事
    米朝首脳会談は6月12日にシンガポールで開かれることになりました
    この日に、この場所で開かれる意味と、北朝鮮の非核化をめぐる
    交渉のシナリオについて考えてみます

    米国によるイラン核合意の破棄は、トランプ米大統領が北朝鮮に対して
    軍事オプションをちらつかせながら恒久的・検証可能・不可逆的な
    非核化を求めていることを強く示唆したものです
    そうした中、米朝首脳会談を6月12日にシンガポールで開催すると
    トランプ氏のツイッターで明らかにされました
    これはトランプ氏が自分のペースで首脳会談について決めていることを
    意味しています
    北朝鮮は開催地として平壌やモンゴルのウランバートルを希望していた
    と言われています
    シンガポールは、形式的には関係各国との等距離外交を志向してきた国で
    米朝首脳会談の開催地としてふさわしい場所です

    シンガポールは、経済で中国との結びつきが強いものの
    安全保障では米国と近く、アメリカとシンガポールは準軍事同盟国です
    チャンギ海軍基地を米軍が使用する協定が結ばれており
    米空軍機も定期的に来ています
    そうしたシンガポールを訪問せざるを得なくなった金正恩朝鮮労働党委員長は
    「敵地」に赴くという感覚のはずです

    6月12日というセッティングも実に絶妙
    その直前の8、9日にカナダで主要7カ国首脳会議があり、西側先進国は
    一致団結して北朝鮮の恒久的・検証可能・不可逆的な非核化を求める予定です
    一方、中国を中心とする上海協力機構の首脳会談は、中国の青島で
    6月中の開催とされていますが、12日の前に首脳会談を開かざるを
    得なくなったのではないでしょうか
    その場合、その場で北朝鮮が同機構に加盟すると発表されるかもしれません

    北朝鮮と中国は段階的な非核化を進める意向で、米国側とガチンコの
    交渉になるだろうと予想されます
    一方、米国がイラン核合意破棄でみせたのは、外交的に成功した合意も
    覆すということの表れで、軍事オプションを背景とした力の外交交渉になりますし
    中東を削減しアジアを強化するとも読み取れます

    交渉の可能性としては
    (1)決裂
    (2)合意
    (3)交渉継続
    の3通りですが、これまでの下交渉から(1)の可能性は低くなっています
    (2)は北朝鮮が完全に米国に屈服する場合にのみあり得
    米国はいわゆる「リビア方式」を求めています
    後ろ盾のいなかったリビアでは、最高指導者のカダフィ氏が殺害されましたが
    北朝鮮の場合、中国が後ろ盾にいるため、リビアの二の舞いはないと思われます
    中国は対米貿易交渉で、対米黒字を1年間で2000億ドルも減少させることを
    要求されるなど、理不尽な二国間交渉を強いられている最中ですが
    自国有利のために北朝鮮を「売る」ことも考えられます(笑)
    一方、タフな交渉を考えると、(3)の可能性も少なくはありません

    北朝鮮問題では、日本の左派マスコミは、日本の「蚊帳の外」論を展開していますが
    まったく的外れ
    さらには「米朝会談直後 日米首脳会談へ調整」という状況です
    これも、日本が求められ「蚊帳の外」でない証左で、会談に中国が赴くなら
    安倍総理もシンガポール入りすることも考慮し交渉が継続しています

    とにかく、アメリカがイラン核合意破棄→北朝鮮が南北会談中止
    その後に、アメリカの姿勢批判と言う流れを見れば明らかなように
    『北朝鮮、イラン、パキスタンの3国のミサイル、化学兵器売買の裏は
    取れてるんだぞ』というメッセージは効いたようです(笑)

    | author : 山龍 | 01:34 AM |
  • 時事
    もう、1年も国会を空転させた野党、エビデンスの無い嘘ばかり書きたてた
    マスコミは、この落とし前をどのようにつけるのでしょうか
    民間のマスコミはいいとしても、国会は一日に2億円の経費が掛かり
    200日空転させたとなれば400億円の損失です!

    その結果が下記の記事ですから、もうバカに付ける薬はないと言うことです
    誰も有罪に問えない(笑)
    有罪になるのは野党が持ち上げた蓮池氏のみと言うバカさ加減を
    突っ込むマスコミも無さそうですが、これが野党とマスコミの実力であり
    日本の国益を阻害する勢力の実態です

    論理的に事実関係を洗い出さず、『とにかく安倍が悪い』で突き進むために
    戦略すら立ちません。戦略が無いから落としどころもなく
    だらだらネタを変えて何時までも続くのです
    最初からエビデンスを集めていれば、せめて佐川のクビくらいとれたはずです

    こんな茶番に400億円の値打ちがあったと思える国民はいるのでしょうか
    反安倍の国民はタダで国会が空転してると思ってるんですか?
    たかだか数億円の話に400億かけて財務官僚のクビも獲れない無能な議員に
    次の選挙でも投票するんでしょうか!?
    400億って経費ですよ、経費!議員報酬を合わせれば、そんな程度で済みません
    今回の件は、無能が税金である国庫から400億円以上盗み取ったんです



    佐川氏らを不起訴へ 森友文書改ざん巡り大阪地検
    2018/5/18
     学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書の改ざん問題で、大阪地検特捜部が佐川宣寿前国税庁長官らを不起訴とする方針を固めたことが18日、関係者への取材で分かった。告発のあった虚偽公文書作成や公文書変造など複数の罪名の適用を検討したが、刑事責任を問うのは困難と判断したとみられる。

     国有地を不当な安値で森友学園に売却し国に損害を与えたとする背任容疑についても、特捜部は当時の財務省近畿財務局幹部らを不起訴にするもようだ。

     財務省は3月、佐川氏が理財局長だった2017年2~4月に国有地取引に関する14の決裁文書の書き換えがあったと公表。価格の事前交渉をうかがわせる記述や安倍晋三首相夫人の昭恵氏を巡る記述が削除されるなどしていた。

     特捜部は捜査の結果、改ざんは文書全体の一部にとどまり、交渉経過などが削除されても、契約の趣旨や内容が大きく変更されたとはいえないと判断。過去の公文書を巡る事件の裁判例も踏まえ、佐川氏らの不起訴を決めたとみられる。

     国有地売却を巡っても、約8億円の値引きの根拠とされたごみの撤去費用が過大だったとまでは言えないとの判断のほか、値引きの背景には学園からの損害賠償請求を避けたいとの意図もあったことから、国に損害を与える目的が認定できないと結論付けたもようだ。

    | author : 山龍 | 12:00 AM |
  • 時事
    安倍政権では、日本が中国と必要以上に親密になることはありません
    日本の基本路線は「門は常に開かれている」というメッセージを出すだけです

    中国の李克強首相が日中韓首脳会談のために来日し
    今後は安倍総理の訪中や、習近平国家主席の訪日も検討されるようになりました
    ここにきて日中が急接近しているようにみえる、というより、日本の姿勢は変わって無いので
    中国が日本へ接近してきているというのは、どのような背景なのか考えます

    日中韓首脳会談は2015年にソウルで開かれて以来、約2年半ぶりで
    李氏、文氏の来日は就任後、初めてでした
    李氏は、中国のナンバー2ですから、中国から頼みごとをする役割を担ったのでしょう

    中国はいま、米国と貿易交渉で難渋し、貿易戦争の一歩手前の状況です
    報道では、「トランプの迷走」、「米国内産業に打撃」、「米中が妥協の兆し」など
    いつものように事実と違う勝手な報道がなされています

    今、米国が中国に対して強烈な申し立てをしている内容は
    近年、主流になってきた多国間交渉の国際貿易交渉では例のない「一方的」なもので(笑)
    二国間交渉ならではのものです
    1、18年下半期の中国の対米貿易黒字を1000億ドル(約10兆9400億円)削減
    2、19年上半期にはさらに1000億ドル削減
    するとして通達しています
    更に
    3、「市場をゆがめる補助金」を即時廃止すること
    4、知的財産権の保護のために中国資本と外国資本の合弁事業において技術移転を求める
      慣行を撤廃すること
    5、サイバー攻撃や経済スパイ行為などで米国の技術や知的財産を盗まないようにすること
    6、米国の制裁に対する中国の報復措置を取り下げること
    7、中国から米国への投資を制限することについて国際機関への提訴なども行わないこと
    8、20年7月までに中国に対して米国と全く同じ関税を設けること
    など、子細はまだありますが、ざっと上げればこのような内容です

    早い話が、中国の理屈で身勝手な貿易慣行が横行してきた過去を黙認しませんよ
    これからは、常識的な商慣行の上に則り貿易します。もちろんパクリは許しません
    という内容で、至極真っ当ですが、反トランプに偏向しているマスコミは、まるでトランプ大統領が
    おかしなことを言っているように報道しています

    上記の中国への米国の要求は、これまで米国が基本としていた非差別主義、多国間協調主義という
    市場ルールとはまったく異なっていて、トランプ大統領にすれば、二国間交渉だから
    これまでの多国間ルールとは違うというあらわれでしょう

    この米国の要求を中国が受け入れる可能性はまずありません。可能性はゼロです(笑)
    過去の米政権から打って変わって強硬に出られ、それを受け入れようものなら中国の
    メンツが丸つぶれになります
    しかし、突き放してそのまま米中の報復措置の打ち合いとなれば、米国への輸出が大きい
    中国の方が打撃を受けます
    ただ、中国の経済成長率の低下は、直接的には1%以下で中国にとっては誤差の範囲内です
    しかし、現在のイラン核合意離脱を中国や北朝鮮は目をかっぽじって見ています
    判断するのに重要なキーは、イランへ経済進出しているドイツ企業や銀行へのアメリカの制裁が
    有るのか無いのか。または、それを材料にした陽動が有るのか無いのか
    もし、アメリカがイラン協力国へ制裁を発動するなら中朝は慌てふためかねばなりません

    中国としては、米中貿易紛争での経済への打撃は小さいと思われるものの
    日本への経済販路を確保しておいた方が望ましいと判断し、日中経済の関係改善に向け
    あれこれ画策しているのです

    当然、政府はそのことを理解しており、米中貿易戦争で漁夫の利を得る可能性を模索しています
    ただ、「一帯一路」や「AIIB」には、表向きは社交辞令を言っても、ここかしこに綻びが出ているのを
    確認していますから、日本としては表向き友好ムードに見せるが、警戒感は解かないという
    ヒットアンドアウェーです
    拒否はせずに歓迎ムードだけ演出し、実質的な内容は殆ど無く、米中間の進捗を見る時間稼ぎを
    したに過ぎません。先の日中での合意についても同じです

    まあ、反安倍のマスコミは、日中合意の内容が無いとこき下ろしているでしょうが
    真実は、『内容が無いように仕向け、時間を稼いだ』というのが正確です
    新聞やテレビを見てると、判断材料や基準が狂い、結果、知らぬ間にバカになります

    | author : 山龍 | 12:02 AM |
  • 時事
    下記は日経新聞の記事です
    ほんと、日経は『経済記事以外はまとも』な新聞社です

    長年、日経の記者は日銀キャリアにレクチャーを受けて記事を書いてきました
    下記も、日銀キャリアにレクを受けて書いたんでしょうが意味不明です!

    だいたい、日銀はNAIRUすらはじき出せないのですよ
    自然利子率をどのように導き出すつもりなんでしょうか
    天から数字が降ってくるとでも思ってるんじゃないでしょうか(笑)

    日経も、知ったかぶりして専門用語をちりばめ嘘を流布するんじゃありません
    もう、バカバカしくって怒る気にもならない内容です

    黒田さんが静観姿勢で居れるのは、安全保障関係で国が揺れてるからで
    北朝鮮の動向次第では、ここに書いてある屁理屈は全部ぶっ飛びますし
    こういう内容を日経に書かしているという姿勢は、国会の会期末になれば
    黒田さんは官邸へ呼び出されてどつかれるということです



    「実質金利と自然利子率が重要」 黒田総裁発言の真意
    編集委員 清水功哉
    2018/5/14
     実質金利と自然利子率という2つの言葉が、これからの日銀の政策運営で大事になっていく――。黒田東彦総裁が先週の講演でそんな趣旨の説明をした。最近の日銀は、追加緩和と距離を置く一方、現行緩和策を「粘り強く」続ける考えを従来以上に強調するようになっている。その意味を理解するうえで2つの用語の理解が重みを持つようだ。どういうことなのか。
     黒田総裁の講演は10日に行われた。2つの言葉に触れた部分は表の通り。実質金利の低下や自然利子率の上昇があれば、経済・物価を刺激する金融緩和効果が増す点を指摘している。その真意を理解するため、まず4月27日の金融政策決定会合での決定を振り返っておこう。
    ■追加緩和と距離を置くことのリスクにどう対応するか
     同会合でまとめた経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、日銀は2%物価目標の達成時期を具体的に書くのをやめた。従来「2019年度ごろ」としてきた記述を削除したのだ。これまで達成時期が6回も先送りされ、そのたびに追加緩和観測が出やすくなっていた。そうした事態を回避し、政策の自由度を確保しようとした。端的に言えば、追加緩和と距離を置いたのだ。




     これ以上の金利引き下げは、銀行収益や保険・年金の資産運用への打撃など副作用が大きいからだ。そもそも既に金利誘導水準はかなり低い(長期金利はゼロ%程度、短期金利はマイナス0.1%)。追加的な政策発動の余地は小さく、貴重な追加策は世界経済の下振れでマーケット環境が大きく悪化した時などのために温存したいという思いも日銀にあった。一段の金利引き下げが「円安誘導」との批判を米国から招く恐れもあった。4月公表の米財務省報告書に、日銀緩和策が円安をもたらしてきたことへの不満表明ととれる記述が登場していた。そこで日銀は次のようなメッセージを発したのだ。「今後、物価見通しを下方修正することがあっても、需給ギャップ改善など物価上昇のメカニズムが維持されているならいちいち政策対応はしない」。ただ、問題があった。追加緩和と距離を置くスタンスは、デフレ脱却に向けた姿勢が後退した印象を与えかねないことだ。円高など市場混乱を招きかねない点を日銀は心配した。
     そこで力を入れ始めたのが、現行の緩和政策を「粘り強く」続けるという情報発信。4月27日の定例記者会見で黒田総裁はその点を強調した。脱デフレに向けた努力を継続するという趣旨だ。決定会合で出た意見を開示する「主な意見」にも、「強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適当」などとする指摘が記載された。そして、さらに出てきたのが、実質金利や自然利子率の重要性を指摘する総裁講演だと理解すればいい。
     実質金利とは名目金利(普段私たちが目にする金利)から人々の予想物価上昇率を差し引いた値。実質的な金利負担感を示す。例えばお金を借りている企業のケース。仮に金利が下がらなくても、販売価格が上がるという期待が強まるなら、金利の負担感は軽くなりやすい。名目金利は横ばいでも実質金利は下がるというわけだ。
     



    グラフBは実質金利の試算値。10年物国債利回りからブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた値だ。BEIは債券市場参加者の予想物価上昇率に関する一応の目安である(ちなみにBEIとは10年物国債と物価連動国債の利回りの差なので、実質金利とは物価連動国債の利回りのことである)。実質金利は昨年夏から年末にかけて低下傾向を示し、今年に入ってからも上昇基調にはなっていないといえる。10年物国債利回りは日銀の緩和政策によってゼロ%程度に固定されているので、実質金利低下の主因は人々の物価観が徐々に改善したことだろう。背景には景気や物価の動向、市場環境、商品市況など様々な要素があるが、日銀も今年1月、予想物価上昇率に関する判断を「弱含みの局面」から「横ばい圏内」に上方修正した。
     今後も「粘り強く」緩和を続けることで人々のインフレ期待を刺激できれば、名目ベースでの金利引き下げ(追加緩和)がなくても、実質金利ベースでの緩和効果は出ると日銀は言いたいのだ。
     次に自然利子率という言葉に話を進めよう。経済や物価に対して引き締め的にも緩和的にも作用しない中立的な実質金利を意味する。一般的に、実際の実質金利が自然利子率を下回る度合いが大きいほど緩和効果が強まる。逆にいえば、日銀が一段の政策発動をしなくても、自然利子率が上がっていけば緩和効果が期待できる。総裁が講演で指摘した通り、政府の成長戦略や企業の生産性向上に向けた努力で潜在成長率(日本経済の実力)が上がっていけば、自然利子率も上昇する。その間、日銀が「粘り強く」緩和を続け今の超低金利を維持すれば、経済・物価を刺激できる可能性があるという理屈だ。
    ■長期戦を覚悟、同時に将来の金利調整への備えも
     追加緩和と距離を置いても、デフレ脱却に向けた努力は続けられるという日銀の説明に疑問を持つ人もいるだろう。人々のインフレ期待をうまく刺激するのは難しいし、自然利子率もそうすぐに上がるとも思えないからだ。黒田総裁も10日の講演で「15年に及ぶデフレの経験が人々の意識や行動に深く根付いてしまっている」と指摘。「現実の物価上昇が予想物価上昇率に波及するまでに相応の時間がかかる可能性がある」と語った。だが、だからこそ、そう簡単に緩和政策から手を引けないともいえる。実質金利や自然利子率が重要だとする日銀の説明は、長期戦覚悟でデフレ退治に取り組むとの宣言と受け止められる。
     もちろん、緩和策が長引けば長引くほど、上述した副作用のリスクも膨らむ。負の影響が緩和策のメリットを上回るなら、将来いずれかの時点で日銀が金利の微調整(金利誘導目標の小幅引き上げ)に踏み切るかもしれない。実は、その際に市場心理への悪影響を回避するための説明にも、実質金利などの考え方を使う可能性がある。「名目ベースで金利を微調整するが、物価情勢の改善や自然利子率の上昇を踏まえれば実質的な引き締め効果は小さく、本格的な出口政策とは異なる」といった情報発信だ。
     つまり、10日の総裁講演からは、日銀が将来の金利調整時の対応について知恵を絞り始めた様子も透けて見える。そういえば、前出の「主な意見」に次のような記述があった。「現状の金融緩和を息長く続けていくもとで、金融政策をより効果的なものとする観点から、出口や正常化の意味について明確な説明に努め、経済・物価・金融情勢に応じて柔軟な対応を取り得ることについて、国民の理解を得ていくことが必要だ」




    | author : 山龍 | 12:00 AM |