山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

2019年06月   <<前月 次月>>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
     
  • 時事
    高橋教授三発目


    実際、バブルの崩壊以降、税収全体が減り、プライマリーバランスが悪化傾向にあった。その状況で消費税の税率を上げると、消費税収のみは増えるかもしれないけど、景気の悪化に拍車をかけてしまい、所得税や法人税、つまり〝税収全体〟がさらに減少してしまうんだ。
    高校生 えっ、消費税の増税によって税収を増やそうとしているのに、税収全体が減るなんてことがあるんですか?
    先生 それが分かるのが次の図34だ。



    この図は、バブル崩壊前後から現在までの、「消費税収」「所得税収」「法人税収」と「税収全体」の推移を表したものだよ。

    バブル崩壊から一貫して景気が悪化傾向にあった2009年度までの期間において、消費税収だけは増えていて、特に1997年の増え幅が顕著だ。

    一方、所得税収と法人税収は傾向として減り続けている。その結果、本来最も重要な「税収全体」が、差し引きで、如実に減り続けてしまっていたのが分かるよね。これは、1997年の消費増税によって、消費税収だけは増えたが、景気低迷のために所得税収と法人税収が減ってしまったことが原因なんだ。

    実際に消費税の増税がどのぐらい景気に悪影響を及ぼすかというと、消費税率3%の増税で経済成長率が1%程度低下するというほどの負のインパクトを持っているんだよ。
    高校生 消費税を増やしたせいで、景気を悪化させて逆効果になっているなんて、ショックすぎますよね……。
    どうすれば財政破綻を避けられるのか
    高校生 今からでも、日本の景気を立て直して、黒字化することはできるんですか?

    先生 正しい政策を行えば、それは存外難しいことじゃないと思うよ。

    その兆しが見えるのが、図34だ。改めてこの図を見ると、2009年以降、特に2013年以降は、それまでとは反転し、税収全体が増加し始めて、その伸びが現在まで続いていることが分かるよね。

    高校生 本当ですね、確かに税収全体が増え出してる!

    先生 その説明はこうだ。小泉政権時代、日銀は政府の説得に応じて、完全には足りないまでも金融緩和をしていた。この緩和が2006年前半まで継続された。その金融緩和の累積効果によって、2007年までは景気がよく、財政収支も好転したんだ。

    ところが2007年にリーマン・ショックが起こって一転、税収全体も一気に減ってしまった。その後の2009年から回復し始めているのは、「死んだ猫も叩きつけると跳ね返る」(英語でdead cat bounce)と言われている通り、暴落レベルで経済が大きく落ち込んだ後には、自然と少しは景気が戻るからだ。つまり、この時の回復は本格的な力強いものではなかったんだ。

    そのことは、所得税収の動きを見るとよく分かるけど、2013年以降は、伸び率がリーマン・ショック直後とはまったく違うレベルの大きな伸び率になっている。すなわち本格回復に入っている。これは、2013年以降の伸びが黒田バズーカという名の本物の金融緩和による伸びであり、ついにリーマン・ショック前の水準を抜いたということだ。

    時々、日本経済は、黒田バズーカがなくとも、リーマン・ショック後から成長したという人がいるけど、それは金融緩和をせずとも「死んだ猫が跳ね返る効果」があったからに過ぎなかった。結局、跳ね返っても黒田バズーカの発動される2013年までは、リーマン・ショック以前の水準まで戻りきらなかったのは図34の通りだよ。

    ただ、この動きをさらに分かりにくくしているのが、2014年の消費増税なんだ。逆にいえば、消費増税をしても、まだ成長しているということは、もし増税していなかったら、日本経済はものすごい回復を見せただろうということなんだ。

    いずれにしても2014年に消費増税があったため、所得税収と法人税収の増加率は鈍化してしまったけど、正しい政策を行いさえすれば、日本経済の回復の見込みは十分あるというわけだ。

    高校生 希望はまだあるということですね!
    先生 それではここで問題です。すでに説明したけど、このプライマリーバランス対GDP比を大きくする(改善させる)には、何が必要だったかな?

    高校生 それは、プライマリーバランス対GDP比は、1年前の名目GDP成長率に連動するという話でしたから……名目GDP成長率を上げればいい! ですね?

    先生 ご名答。それが分かるのが図33だったね。
    ここから導き出される答えは結局、債務残高対GDP比を減らし、財政の健全化を進めるためには、プライマリーバランスの赤字幅を縮小させるか黒字幅をより大きくするかで、そのためには、正しい経済政策運営によって、ちゃんと経済成長率を高く保つことが重要、ということになるよ。
    消費増税のマイナス影響を予測できなかった財務省

    先生 ここまでの話が分かると、日本の財政赤字問題論議において、財務省が最も間違っていたポイントが明らかになるよ。

    まず、財務省と内閣府が2011年5月30日に提出した「社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書」の最終結論が何だったかを説明しよう。

    高校生 消費増税を後押しするきっかけになった、2つ目の書類ですね。

    先生 その最終結論は、次の通りだ。(次の図も同報告書からそのまま引用したもの)
    「最後に消費税が3%から5%に引き上げられた1997年と現在の財政状況につき、一瞥しておくことにしたい。(略)1997年には100%であった債務残高対GDP比率は直近では198%と約2倍になった。97年と比べ財政状況が格段に悪化した今は、当時と比べ消費増税の必要性ははるかに高くなっている、と考えなければならない」
    つまり、「債務残高対GDP比が増加傾向にあるので、それを食い止めるために消費増税をしなければいけない」という内容だよ。

    高校生 え……でもさっきの話じゃ、景気が悪化している時に消費税を上げても、全体の税収を下げることになって、逆効果なんですよね?

    先生 そう、決定的に間違ったことを言ってるんだ。「債務残高対GDP比が増加傾向にある」というのは事実だからいいとして、その結論が、「だから財政再建を行わなければいけない、つまり債務残高対GDP比を減らさなければいけない」なら、誤りではないのだけど……。「債務残高対GDP比を減らすために、不況下にもかかわらず〝消費増税〟を行わなければいけない」と判断したことは、財務省が犯した最大の過ちと言える。

    実際に財務省が、消費増税を行ったことで、最悪の結果──つまり名目GDP成長率が下落し、プライマリーバランスの赤字幅が増えた──を確認できるのが、図33だったね。

    高校生 知れば知るほど、消費増税は絶対にやってはいけないことだったんですね。

    先生 財務省は、国の借金を減らすために消費増税を行った結果、逆に国の借金を増やしてしまったというわけだ。

    日本経済は本当に回復できるのか
    今、向き合うべき一番の問題は、「財務省が進めている消費増税政策には、99%のメディアが『増税やむなし』という姿勢」ということです。

    例えば毎日新聞は、2018年11月21日の「借金まみれの平成の教訓」という社説の中で、次のような記事を書いています。

     日本の財政が危機的状況にあることは明らかだ。国と地方の借金総額は国内総生産(GDP)の2倍以上に上る。巨額の軍事費を大量の国債で賄い、破綻寸前だった第二次世界大戦末期に匹敵する水準である。
     平成は日本経済の転換期だった。バブル景気がはじけ、低成長が当たり前になった。環境が変わった以上、財政も漫然と借金に頼らず、負担を分かち合って高齢化を支える仕組みにすることが欠かせない。国民に理解を求めるのは政治の役割だ。
     なのに首相は現実離れした高成長と税収増を当て込み、歳出抑制や負担増にほとんど手をつけなかった。
     先月には2回延期した消費増税を来年10月に行うと表明したが、来年度予算案には大型景気対策も盛り込む。負担先送りに歯止めをかける増税本来の理念はかすむばかりだ。

    本書を読んだみなさんは、この社説がいかに間違っているか、もうお分かりでしょう。

    毎日新聞の社説には、「現実離れした高成長と税収増を当て込み」とありますが、景気が回復すれば全体の税収が増え、プライマリーバランスが回復傾向に向かうのが当然であり、「現実離れ」とする意図が分かりません。

    第3章の図33を見ても、名目GDP成長率が上がれば、税収が増え、プライマリーバランスが回復傾向に向かうことは明らかです。




    | author : 山龍 | 12:02 AM |