山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

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  • 時事
    高橋教授二発目


    そもそも日本の借金はなぜ増えたのか?

    先生 「国の借金はゼロにする必要がない」「債務残高対GDP比の大きさだけで危機を測るのは間違い」ということは、これで理解できたかな?

    高校生 はい、何だか少しだけ希望の光が見えてきた気が……。でも、日本が本当に財政破綻に向かっていないかどうかは、どうすれば分かるんでしょうか?

    先生 それは、債務残高対GDP比が「どういう動きをしているか」を見れば分かるよ。

    例えば、債務残高対GDP比が爆発的に増えていたら確かに危ないし、高い水準であっても、減少する方向であれば問題ない。

    高校生 債務残高対GDP比の〝水準〟じゃなくて、〝動き〟を見るんですね。

    先生 そうだね。もしも、増加の一途を辿っていたら、食い止めて減少方向へ向かわせればいいだけなんだ。

    高校生 食い止めるには、どうすればいいんですか?
    先生 それを知るために最初に考えたいのは、「じゃあなぜ失われた20年という間に、日本の財政赤字の問題がこんなに問題視されるようになったのか?」だね。

    答えは、「失われた20年」と呼ばれた間に、次の2つのことが同時に生じたからだよ。
    ①景気が悪化した結果、国の収入である税収(歳入)が減った
    ②景気を下支えするために、国の支出(歳出)である公共事業等の景気対策(財政政策)が増えたが、その財源として国債が大量に発行された結果、国の借金の総額(国債残高)が膨大なものになった
    それで財政が悪化し、「これ以上の財政赤字の悪化を防ぐために消費増税は不可避」という報道がされ続け、実際1997年と2014年に消費増税が執行されたんだよ。
    高校生 そんな状態なら、やっぱり消費税アップは仕方なかったんですね……。
    先生 そういうイメージだよね。でも、前にも言ったけど、私は物事を決して印象では語らず、当然とされていることを、しっかりデータで分析することで真実を明らかにしていきたいんだ。
    高校生 じゃあ、報道されてきたことが、すべて正しいわけじゃない?
    先生 そうだね。まず私が主張したいことは、「国の借金を返すために、まだ不景気が回復していない段階で消費税を上げるのは誤り」ということだ。
    高校生 でも、消費税を上げてお金を集めなかったから、日本の借金が増えちゃったんじゃないですか?
    先生 実際はその逆だったんだよ。さっきも話したけど「日本は消費税を上げてきたからこそ、国の財政状況が悪化してしまった」と言えるんだ。まず次の図33を見てごらん。



    この図から分かることは、バブルが崩壊して以降、プライマリーバランスが一貫して悪化傾向にあったということだ。
    高校生 プライマリーバランス……ですか?
    先生 「プライマリーバランス」とは「基礎的財政収支」とも呼ばれ、国や自治体の財政の健全度を表す指標なんだよ。単純に言えば、プライマリーバランスが黒字であれば財政赤字は減っていき、赤字であれば財政赤字が増えていくものだよ。

    具体的には、次の式で表されるんだ。
    プライマリーバランス=税収-(国の借金返済関連費を除いた)国の支出*
    *─この場合の(国の借金返済関連費を除いた)「国の支出」とは、「国の支出全体から国債などに満期が来た時に元本を払い戻す資金(国債の償還費)や国債についた金利を払う費用(国債の利払い費)を除いたもの」=「社会保障費+公共事業費+教育・科学費+国防費+地方交付税交付金等」
    つまり、プライマリーバランスとは、政府が公共事業費や社会保障費などに毎年使うお金である「国の支出」を、税収からどれだけ賄えているかを示すものなんだ。
    高校生 学校の部活でいうと、部費が決められた範囲内に収まってるかどうか、ってことですかね?
    先生 まさにそういうことだね。税収より国が多くのお金を使っていれば赤字であり、逆に、少ないお金しか使っていなければ黒字ということになるんだ。
    高校生 でも、赤字になってお金が足りなくなった場合はどうするんですか?
    先生 その時は、国債の発行、つまり借金によって補われるんだ。つまり、赤字が続けば続くほど国が返さなければいけない借金の額、つまり財政赤字が増えていくことになる。

    逆に黒字が出た時は、そのお金が借金返済にあてがわれるから、財政問題は解決に向かうことになるね。だからプライマリーバランスは、財政の健全度を表す大切な指標なんだ。
    高校生 じゃあ、プライマリーバランスを黒字にするように、政策を立てないとダメなんですね。
    先生 まさに「財政赤字を解消し、健全な財政状況を築くために」という目的で、日本では消費税が1997年4月1日に3%から5%に引き上げられ、2014年4月1日に5%から8%に引き上げられたんだ。

    しかし、予想に反してプライマリーバランスは悪化傾向に動いてしまった。

    改めて図33を見てごらん。これは、バブル崩壊以降の日本の名目GDP、すなわち名目国内総生産の成長率(1年前)とプライマリーバランス対GDP比の推移を描いたもので、通常この2つがほぼ連動して動くものなんだ。

    この図を見れば、名目GDP成長率が低下していて景気が悪化傾向にあった中で、2度の消費増税がさらに景気に追い打ちをかけたと一発で分かる。その結果、税収の基礎となる名目GDP成長率が減り、プライマリーバランスが悪化したんだ。
    高校生 え? 改善させようとして行った消費税アップによって、何で逆にマイナスになっちゃったんですか?
    先生 そもそも景気が悪化すると、全体の税収が悪化する傾向にあるからだ。

    まず、税収とは「所得税」「消費税」「法人税」という3大要素から成り立っていて、具体的な内容は、概念的には次のようになる。
    ・消費税収=総消費量×消費税率
    ※消費税からの税収とは、総消費量に、その時の税率をかけたものである。そして総消費量は景気が悪化すると減るので、消費税収自体が減る傾向にある。ただし消費には恒常性があるので、個人の所得や法人の利益ほどには激しく増減はしない
    ・所得税収=個人の所得の合計×所得税率
    ※所得税からの税収とは、個人の所得の合計に、その時の税率をかけたものである。そして個人の所得は、景気が悪化すると減るので、所得税収自体が減る傾向にある
    ・法人税収=法人の総利益×法人税率
    ※法人税からの税収とは、法人の総利益に、その時の税率をかけたものである。そして法人の総利益は、景気が悪化すると減るので、法人税収自体が減る傾向にある
    このように景気が悪化すると、3つの税収は減ってしまう傾向にあるものなんだ。


    | author : 山龍 | 12:08 AM |