山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

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  • 時事
    昨日に続き、下記の表は、ユーロ圏の潜在名目成長率を、仮に3%に設定した場合に
    それを実現するためにECBが供給すべきマネタリーベースの供給残高(マッカラムルール
    の考え方)と、実際のマネタリーベース残高を示したものです
    ちなみに2003年以降のユーロ圏の平均名目成長率は2.7%でした




    次に、上記の図における2つのマネタリーベースのギャップ、いわば最適なマネタリー
    ベース残高と実際のマネタリーベース残高の乖離率と、インフレ率の関係を図にすると
    下記の図になります




    マネタリーベースのギャップは、ECBの金融政策を示したものですから、下段の図は
    2009年以降、ECBの金融政策スタンスがインフレ率に大きな影響を与えるようになった
    ことを表しています
    今後、ユーロ圏経済は、名目3%成長が厳しくなっていくと考えられ、本来、このような
    局面では、ECBはマネタリーベース供給量を増やしていくべきですが、前述のようにECB
    はテーパリングに入っているため、マネタリーベース残高はせいぜい、横ばい、場合によっ
    ては減少する可能性が高く、今後、マネタリーベースのギャップはインフレ率がさらに低下
    する方向で開いていく公算で、ECBの金融政策との兼ね合いでは、ユーロ圏はデフレに
    突入していくと考えられます
    このような金融政策不在のリスクが高まる中、さらにデフレを促進させそうなのが、ドイツ
    を筆頭にしたユーロ圏の極めて厳格な財政規律です(真偽は未確認ですが、とうとうドイツ
    は減税するという話も入っています)
    OECDの予測では、2018年末時点でのユーロ圏全体の政府債務残高は、GDP比で87.3%
    です。ユーロ圏のマーストリヒト条約では、ユーロ圏への参加条件の1つとして政府債務
    残高のGDP比を60%以内に収めるという規定があります
    話しが飛びますが、EUと日本のとEPAを審議する過程で、同一経済圏を構築するに
    あたり、EUは日本の債務はゼロ、即ち日本の債務から資産と日銀資産を差し引きし
    +200兆円と見積った結果が、即時EPA締結に繋がったのです。日本は破産などと
    寝ぼけた話をしているのは財務省と、その影響を受けているバカだけです
    話しを戻し、EU加盟後にその条件をクリアーできなくなった場合には、その国は緊縮財政
    による財政再建を強いられることもマーストリヒト条約に記載されています

    日本のマスコミや識者は、ドイツの思考に引っ張られ、ユーロ圏での財政危機といえば
    ギリシャ、イタリア、ポルトガルの問題だと頭に描きがちですが、中心国であるフランス
    も99.1%、財政が健全だといわれるドイツでも60.5%と、厳密にいえば、ユーロ参加条件
    をクリアーできてないのです
    以上のように、ユーロ圏は、「本来とりうるべき経済政策不在のままデフレがじわじわと
    進行していく」という、90年代終盤以降に日本が経験したデフレに陥りつつあるというの
    が、EUに対する経済学者(日本以外)のものの見方です

    さらに懸念を追加すると、「中国への‟過剰“な接近」です。ドイツを中心とするユーロ諸国
    は、2000年代前半、すなわち、ユーロ発足当初から中国への輸出依存度を高めてきました
    中国経済が好調な局面では、この戦略が功を奏し、自動車等の様々な分野で競合する日本
    を凌駕してきた側面もありましたが、ここにきての中国経済の急激な景気悪化は、ユーロ圏
    経済を直撃しています
    このような状況下では、中国経済が奇跡的に「元の形」で復活すれば、ユーロ圏経済も
    奇跡的に底打ち回復する可能性がありますが、熾烈な米中貿易戦争の中、万が一、中国経済
    が短期的な景気悪化から回復するとすれば、「元の形」ではなく、従来と「異なった形」で
    の回復しか望めません
    「異なった形」の詳細は他の機会に書きますが、簡単にいえば、「ハイテク産業化」という
    よりも「消費大国化」という形での構造転換になればと言う条件付きで、この場合、機械や
    自動車といった現状のユーロ圏の主力輸出産業主導で、EUの対中景気回復が実現できる
    かは不透明ですから、ユーロ圏経済の苦境は中国以上に深刻かもしれません
    仮に、ユーロ圏経済が苦境から抜け出すストーリーを無理やり作ると、中国で不動産等の
    バブルが崩壊することで、中国に対し莫大なエクスポージャーを抱えてきたEUの金融
    機関の不良債権が激増した結果、欧州金融危機が勃発、それが世界的な金融危機に深化する
    のを食い止めるために、ECBが劇的に量的緩和政策に転じると同時に、ユーロ圏諸国の
    政府が金融機関に対し公的資金を投入、これをきっかけに財政規律が一時的に放棄され
    財政支出拡大・・・という、今とはかけ離れた極端な話くらいしか思い浮かびません
    それほど現在のEUは嵐の前日であり、報道が叫ぶブレグジットによるイギリスの落日
    ではなく、イギリスは結果として沈む船から逃げ出したんじゃないかと思います


    | author : 山龍 | 12:02 AM |