山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

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  • 時事
    ブレグジットのプロセスについては、状況が目まぐるしく変化しているので
    どの時点での事実を報道するのかは難しいでしょうが、報道とは違う面を見ます

    まず、一言で言うとブレグジットはめちゃめちゃな状態になっています
    多くのイギリス人が、ブレグジットを望んでいるわけではありません
    離脱を本当に望んでいる人々でも、どういう形態の離脱にすればいいのか意見が一致
    していません
    メイ英首相は、本心では残留のほうがいいと思っているのに、国民投票で国民が選択し
    彼女自身は信じてもいないブレグジットを進める、という一筋縄ではいかない仕事を
    引き受けてしまってます
    EUは何よりもまず、EU自身の存続を最大の関心事にしていて、加盟国の離脱も
    できる限り苦痛なものにしてやろうと考えています
    それは、その取引が、EU自身やEUの同盟国であるイギリスの経済的利益を損なうことに
    なるであろうことでもお構いなしです
    実際のところEUは、悲惨な取引にすればイギリスが考えを変えて残留するだろう、と
    計算しているように見えます
    ブレグジットが及ぼす悪影響は、どう転んでもイギリスよりEUの方が痛手が大きく
    しかも、長期的に持続する痛みです
    イギリスの痛みは、落ちるとこまで落ちれば、後は回復するでしょう

    もう一つは、ブレグジットの是非を問う国民投票を再実施すれば局面を打開できるという
    考えは危険で、EUを更に図に乗らせるだけだということです
    EUから見れば、ブレグジットはまだ既成事実ではないので、前回の国民投票で離脱票を
    投じた人々にとっても受け入れ難いほどの取引を結ぶことで「反乱」そのものを鎮圧できる
    というふうに考えているのですから、その考えが増長します
    また、国民投票の再実施でイギリスが今以上に分断されるリスクがあり、豊かな人々や
    大都市の住人は圧倒的に残留票を投じる一方、豊かでない人々や地方の住人が離脱票を
    投じるだろうことは、前回以上にはっきりしていますから、2度目の国民投票は「一般の」
    国民の目から見れば、「権力層のエリートたち」が民主的な声を黙らせるために力を行使
    した、というふうに映り、その後のイギリスを危うくさせます
    イギリスの低所得者は、再投票は離脱派の票を割るように不正操作されるだろうから
    公平なものにはならないだろうと考えているようです
    つまり、「これらの具体的な条件下においての離脱」か「残留」か、という2択で問う
    ことで、「概してあなたは残留を望むか離脱を望むか」という当初の問いを変えてしまう
    というわけです
    これは、「離脱」か「残留してEUの欠点も全て受け入れEUの運営に対してほとんど
    あるいは全く管理権をもたないことに同意」か、という2択で問うのと同じくらい
    不公平で、こちらの2択にすれば残留派の票を割ることができると残留派は考えています

    さらに、現在の混乱にもかかわらず、EU離脱派の叫ぶ理由の多くのほうが、残留派の
    それよりずっと見えやすく、明白な主張がなされています
    EUは遠い組織で、民主的と言うより官僚的で、管理的で中央集権的で、いつでもEUの
    権力を第一に考えている、と考えられていて(実際、その通り)ブレグジットの交渉に
    よって、これが変化することはありませんでした
    残留派の主張をつぶさに見ても、「EUが素晴らしい」などという論調は全くなく
    離脱に反対する声で最も一般的なのは、「ブレグジットはそれだけの価値があるのか?」
    「より貧しくなるために投票する者などいない」といったものですから、「EUは民主主義
    と外交の成功例であり、EUの一員になることで私たちは恩恵を受けられる」と言う
    のではなく、「離脱は痛い目を見る」という言い方をしています
    日本の財務省が緊縮財政のために国民を騙す手法と同じく、「将来、えらいことになるから
    増税を呑め!」と言っているのとまったく同じ
    せいぜい残留派は、EU残留の利点である、域内の自由貿易やビザなし移動などを指摘
    したり、もしも残留したならEUを内部から改革するよう努力できる、と唱えたりする
    のが関の山です

    そして最後に、残念ながらEUと言う組織は常に改革をとても渋る体質を露呈してきた
    事実があります
    2017年にマクロン氏がフランス大統領に選出されたとき、彼はブレグジット後の
    ヨーロッパの「白人期待の星」とみられ、熱意ある親欧州派でありながら、EUに真の
    変化をもたらしてEUと市民を再びつなぐことができる精力的な若き改革者というふうに
    他国の市民は捉えました
    ところが、彼のEU改革論はどこかへ消え失せ、無期限延期の状態になってしまい
    代わりにマクロンは今、自国で問題を抱え込んでいます
    ベルギーの首都ブリュッセルに住むEU本部のエリートたちは、こんな問題に直面して
    頭を悩ませることもないという構造問題も棚上げです
    マクロン氏が欧州軍構想の議論を復活させた責任は重く、その構想こそイギリス有権者が
    EUを離脱したくなる要因の1つになっており、イギリス以外でも東欧諸国や中欧も
    マクロン氏とメルケル氏がすすめる欧州軍に反対です
    イギリスの有権者は、今後、欧州軍創設が避けられなくなると考えてますから、離脱を望む
    というより、欧州軍創設はあり得るし、もしイギリスがブレグジット騒動なしにEUに残留
    していたら、イギリス有権者の意見は問われないままに、イギリス政府は欧州軍創設に
    賛成していただろうと感じているからこそ、遠いEUを拒否して離脱を望んでいるのです
    EEC(欧州経済共同体)からEC(欧州共同体)、そしてEUへ、という歴史を見れば
    加盟国の市民の疑念などおかまいなしに本部の権力を強化していくという、一貫したEUの
    傾向が見て取れます


    | author : 山龍 | 12:00 AM |