山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

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  • 時事
    昨日までのデータを踏まえ19年度概算要求の数字を見ます
    基本的な考え方として、財務省というのはできるだけ予算を絞り込みたいと
    常々考えている役所であるということ
    これは「職業病」ですが、「財政の健全化」というのは建前であり、当初予算で
    絞り込んでおけば、補正予算で削った分を復活させたときに、要求官庁がより
    財務省に「恩義」を感じるようにしているだけと言う構図が昭和から続いています
    「恩義」のお返し、要はバーターとして要求官庁傘下の機関への天下りがありますから
    持ちつ持たれつの関係です
    最近の15年度、16年度と17年度をみると、当初予算をそれぞれ5%、5%、4%カット
    しておき、補正予算で3%、3%、2%増やしています
    概算要求の水準の2%減が基準となっており、概算要求まで達していません
    これは、財務省が安倍政権を少しずつナメてきており、官邸の意向を無視して
    緊縮財政を進めているということです

    しかし、世界の潮流と緊縮財政は真逆で、こういう真逆な行動はリーマンショック時にも
    ありました。他国が金融緩和でマネタリーベースを拡大する中、日本だけが金融緩和せず
    (多少しましたが、すぐやめました)、円高が異常な為替価格になりデフレが加速しました
    日本のダメなところは、リーマン時の政策ミス、金融当局のミスをシッカリ検証せず
    先人の責任を問わないところです
    責任の所在をあいまいにするから同じ過ちを何度も侵します
    さて、緊縮財政については、世界的に批判が出てきています
    イタリアのジェノバでの高架橋崩落事故をきっかけに、反緊縮の可能性が浮上している
    と各国のメディアは報じていますが、ドイツ主導のEUの緊縮主義にもあからさまに
    批判の声があり、IMFも過去の緊縮政策は間違いであったと謝罪しています
    ところが日本国内の報道では、インフラと言うと「ばらまきだ」と批判的なトーンとなって
    緊縮財政がもたらす悲劇と比べてどちらが問題なのか、近視眼的報道ばかりです

    イタリアのコンテ首相は既に2019年予算案の枠組みを固めていますが、連立政権を
    構成する右派政党「同盟」を率いるサルビーニ副首相は、ジェノバの事故後
    EUの財政規律が安全対策への支出を妨げるなら「従うことが理にかなうのか疑問が生じる」
    と不満を表明し、EU会議の場でも同じ発言をしています
    EUの財政規律は、1993年11月発効のEUのマーストリヒト条約 (現リスボン条約)に
    定められた、財政赤字の2つの基準のことを言います
    具体的には、①単年度の財政赤字がGDP比3%以下、②公的債務が同60%以下、という
    もので、これを順守することを加盟国に義務付けるとともに、加盟国の財政を監視する
    ことが取り決められています

    ます、そもそも論になりますが、この「公的債務残高をGDP比60%以下にする」という
    のは、理論的におかしな話です
    資産を考慮していないので、これでは赤字国債も建設国債も同じ扱いになってしまい
    国家の借財と投資が混同されています
    建設国債は、それによってつくられた道路などの公共物が「資産」として残るので
    投資のための手段であり、経済成長には欠かせないものです
    先の関西を襲った台風被害、北海道の地震被害を見れば明らかなように、インフラが
    あっての経済活動であり、インフラ投資を抑え込むと人命も経済も滅びます
    この点を考慮すると、公的債務残高の基準を作るなら、「資産」を考慮しネットベースで
    考えるべきで、企業人なら当然の考え方ですが、机上でしか考えない役人と学者には
    味噌も糞も同じなんでしょう

    EUのこれまでの発展の中で、各国の投資は欧州機関で行うという考え方がありました
    それは、1958年ローマ条約によって設立されたEIB(欧州投資銀行)です
    本部はルクセンブルクにあり、EU域内のインフレ整備などに融資している政策金融機関
    です。EIBにはEU各国が出資していますが、財政的にはEUと独立しています
    つまり、EIBが融資するインフラは、EIBが発行する債券で賄われ、自国で国債発行する
    ことなく整備できる、という仕組みです
    この仕組みがうまく機能すれば、EU各国はインフラ整備のための建設国債を発行する
    必要がなくなります。しかし、実際にはあまりEIBは機能していません
    EIBの総資産は5500億ユーロ(71兆円)。EUのGDPが15.3兆ユーロ(2000兆円)
    の3.5%に過ぎず、とてもEU全域のインフラ投資を賄えるものではないのです
    つまり、EIBはEU各国の建設国債の振替受け皿になれないのです
    こうして、EUは健全なインフラ整備を行おうとしても、「財政規律」という縛りが
    あるため、それが出来なくなっている背景があり、イタリアの高架橋崩落という大事故で
    その不満が吹き出しはじめたということです

    財務省は、EU財政規律を金科玉条に扱い、それをマスコミが垂れ流すので
    EU財政規律の不合理性を指摘する人はマスコミに登場しません
    いまの日本では財政再建の必要性はかなり乏しく、不合理な緊縮財政がもたらす悲劇の
    ほうが大きいと再三警告しても、『優秀な財務官僚』が考えてのことだから正しいと
    盲目的に考えるのです
    無駄なインフラ整備は必要ありませんが、費用便益をしっかりと精査した上での
    インフラ整備は、財政規律と無関係ですから財政問題を理由として躊躇するのは
    考え方としてバカげていて、行動として殺人行為に等しいものです
    今後30年間で南海トラフ地震が発生する確率は7割以上とされ、それを今後5年間で
    みると、10%程度になる一方で、日本国債のクレジット・デフォルト・スワップ(日本
    政府が財政破綻した場合に保証してもらう「保険料」のようなもの)のレートは
    国際金融市場で取引されているが、現在のレートは0.2%程度です
    これは、世界の中の中でも最低レベルであり、これから算出すると、今後5年間で
    日本政府が破綻する確率は1%程度、と国際金融市場はみているということです
    つまり、日本のあ財政が危ないと戯言を言っていますが、その確率は1%しかなく
    逆に、南海トラフ地震の確率は70%もあるということです

    南海トラフ地震が起これば、日本経済が「直撃弾」を食らうことになります
    それでは不味いので、その前に防災を目的として国債発行をして、できるだけこれに
    備えておくことは、小学生でもわかる合理的な戦略です
    もちろん、この考え方は今年の豪雨のような数十年に一度という自然災害でも当てはまり
    早急に、過去最高レベルである当初予算ベースで、10兆円程度の公共事業関係を確保
    今後ペースを上げ、最終的には100兆円ベースの予算をかけても、建設国債分以上に
    資産計上されますから、国家のバランスシートは微動だにしません
    当然、いまは「国債品不足」と「マイナス金利」という絶好の環境ですから、これを逃す
    手は全くなく、海外の市場、ダボスなどの会議でも『なぜ日本は建設国債を発行しないのか
    』と不思議がられているくらいです


    | author : 山龍 | 12:43 AM |