山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

2018年10月   <<前月 次月>>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
     
  • 時事
    下記は大蔵省OBで、長年、大蔵、財務省関連の委員会で手腕を振るわれた野口さんのコラムです
    そういった経緯があるからか、あるいは自分たちの保身に近い論理からか
    マスコミへ登場する機会も多い野口氏は、アベノミクスの金融緩和の折には
    「国債が暴落する」、「日本が財政破綻する」とハルマゲドンのように似非恐怖をばらまき
    増税が正しいという屁理屈を展開されました

    世間には「リフレ」や「リフレ派」についてご認識がありますが、「リフレ」は日本にしかない
    造語で、リフレ派が説く金融政策や財政政策は、世界ではスタンダードです
    野口氏のような昭和の怪人が説く「カビの生えた理論」に固執する日本の状況は
    正しいとか正しくないという以前に「病んでる」ということを自覚するべきです
    海外の新聞、学者のレポート、各機関の発表を読んでいれば、日本の学者やエコノミストの
    言うことが間違っている、または時代錯誤であるということがわかります



    TPPもFTAも、日本の「真の開国」を阻む閉鎖的クラブにすぎない
    「自由貿易」を正しく理解してますか?
    野口 悠紀雄
    早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
    一橋大学名誉教授
    米中貿易摩擦やアメリカのTPP離脱など貿易をめぐる衝突が続くなか、『世界経済入門』の著者・野口悠紀雄氏は、FTAやTPPが自由貿易と混同して語られることに警鐘を鳴らします。本書より、「自由貿易とは何か」を基本から徹底的に解説した第3章の一部を掲載します。
    「仲良しクラブ」は望ましいのか
    国の世界に対する態度として、つぎの3つを区別しましょう。
    A:引きこもり主義(可能な限り鎖国政策をとる)
    B:「仲良しクラブ」の結成(FTA、EPA、EUなどの地域統合)
    C:すべての国と分け隔てなく付き合う(自由貿易主義)
    Bの「仲良しクラブ」とは、メンバーが限定された集まりです。具体的には、これから
    述べるFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定。TPP〈環太平洋パートナーシップ協定〉など)といったものが該当します。
    また、EUのような巨大な地域統合もこのカテゴリーに属します。クラブのメンバーの交流を盛んにするためにさまざまな措置を取ります。ただし、クラブの外との関係はこれまでどおりです。だからこれは、Aを一国から数ヵ国の集まりに拡大したものだと解釈することができます。
    問題は、Bが望ましい方向かどうかです。日本の多くの人は、「仲良しクラブの約束を
    受け入れないのは、引きこもり主義だから、望ましくない」と考えています。しかし、「世界に開かれた国」とは、本当はCの方向を取る国です。
    もちろん、Cの実現は簡単ではありません。では、「BはAよりはCに近いからよい」
    と言えるでしょうか。これは、「関税同盟の理論」として経済学で古くから議論されてきたテーマです。その結論は、「Aより悪くなることもある」というものです。
    なぜなら、クラブの外の国との関係を緊密化すべき場合、クラブに入っているためにそれが阻害されることがあるからです。
    もっとも、日本でBがよいと考えられているのは、「Cに近いから」というよりは、「人口や経済規模などが大きいほど強いから」という考えに基づくのでしょう。「大きいものは強い。アメリカは大きい。欧州も統合すれば強くなる」という発想です。
    軍事的には、確かに大きいほうが強いでしょう。その考えを経済問題にも拡張しようとしているのでしょう。
    しかし、経済的に重要なのは、クラブの仲間だけと付き合うことではなく、さまざまな国との関係を緊密にすることです。とくに、資本や労働力の流入に対してオープンな姿勢をとることです。これらは仲良しクラブの外から来ることも多いので、むしろクラブに入っていないほうがよい場合も多いのです。
    仲良しクラブは、EUの場合に典型的に見られるように、巨大化した組織を運営するた
    めに必然的に巨大な官僚システムを生みます。この支配を受けたくないと考えるのは、当然です。
    FTAやTPPは、貿易自由化協定でなくブロック化協定
    Bで中心となるのは、FTAやTPPといった地域協定です。
    FTAとは、参加国が関税や輸入割り当てを撤廃したり削減したりする協定です。
    TPPは、環太平洋地域の国々による経済連携協定(EPA)です。
    FTAやTPPは貿易自由化の協定であると考えられています。しかし、これは大きな
    誤解です。
    これらは、自由化ではなく、自由貿易の原則に反するブロック化協定です。その点
    で、先ほど挙げた分類では、CではなくBに該当します。FTAやTPPは、経済学では「関税同盟」と呼ばれます。
    経済圏やブロック化協定、関税同盟は、自由貿易と混同されています。いくつかの国で
    集まって、その域内では関税を引き下げ、または撤廃しようとするものだからです。
    FTAやTPPを評価するにあたって、自由貿易との区別が最も重要な点です。
    こうした協定が協定加盟国間の貿易を促進することは、言うまでもありません。しか
    し、関税同盟は、域外諸国との間に関税障壁を設けています。したがって、それまであった域外国との貿易を縮小させるという効果も持っています。
    TPPの場合には、中国が除外されるため、中国との貿易が縮小するという可能性
    が、日本経済にとって大きな問題となるのです。
    ブロック経済化が第二次世界大戦をもたらした
    関税同盟は、歴史的にはハンザ同盟の頃に遡ります。これは、中世の末期に、北ドイツの北海・バルト海沿岸にあるリューベックやハンブルクが中心となって形成した同盟体です。13世紀から16世紀ごろにかけて、北欧の貿易や商業を支配しました。
    また、第一次大戦と第二次大戦の戦間期には、ブロック経済化が進展しました。
    1932年、イギリスは、それまでの自由貿易主義を破棄し、保護関税による国内産業
    の保護と国内市場の拡大政策に転じました。さらに、自治領とイギリス連邦を形成し、スターリング・ポンドというイギリスの法定貨幣を基軸通貨とする経済圏である「スターリング・ブロック」を推し進めました。
    これを契機として、ブロック経済化が世界中に広がったのです。ブロック内部では互い
    に利益を享受し、外部に対しては関税障壁によって輸入を排除しようとしました。
    スターリング・ブロックから締め出された日本は、満州や台湾に進出し、「大東亜共栄圏」を形成しようとしました。ドイツは、東南ヨーロッパと南米とで経済圏を確立しようとしました。フランスやオランダも、独自の経済ブロック形成をめざしました。こうした排他的なブロック化の動きが、第二次世界大戦を引き起こす大きな原因になったのです。
    もちろん、この当時と現在とでは、さまざまな経済的条件が大きく変わっています。しかし、「ブロック化が危険な結果をもたらし得る」という点は、われわれが忘れてはならない教訓です。
    EU、EFTA、NAFTA
    第二次大戦後、地域統合化が進められました。欧州では、1952年に欧州石炭鉄鋼共
    同体(ECSC)が設立され、57年に欧州経済共同体(EEC)が発足しました。これらが
    67年に欧州共同体(EC)に移行し、93年に欧州連合(EU)が発足しました。
    これに対して、イギリスが中心となって60年に欧州自由貿易連合(EFTA)が設立さ
    れ、EECの枠外にあった諸国が加盟しました。
    また、アメリカ、カナダ、メキシコの3国で、北米自由貿易協定(NAFTA)が94年に
    発効し、北米産品の大部分の関税を発効後直ちに撤廃しました。その後、残る品目の関税も段階的に撤廃され、現在、北米の貿易はほぼ関税ゼロで取り引きされています。
    FTA、EPAとは
    第二次大戦前のブロック化が世界大戦の一因となったという反省から、1947年にガ
    ット(関税及び貿易に関する一般協定)が作成され、ガット体制が48年に発足しました(日本は55年に加盟)。
    これは、貿易における無差別原則を基本的なルールとして規定したもので、多角的貿易体制の基礎を築き、世界経済の成長に貢献してきました。これは、前の分類で言えばCに相当します。
    ガットは暫定的な組織として運営されてきました。しかし、強固な基盤をもつ国際機関
    を設立する必要性が認識されるようになり、94年のウルグアイ・ラウンド交渉の妥結の際に、WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)の設立が合意されました。
    ところが、ドーハ・ラウンドは、各国の利害の調整ができなかったために、頓挫しました。こうして、FTA、つまり仲良しクラブ(B)が増えるようになりました。
    FTAが増えたのは、比較的最近のことです。90年以前にはわずか16件しかなかったも
    のが、90年代に50件増加し、2000年以降150件を超えるFTAが新たに発効しました。現在、世界には300近くのFTAが存在しています。
    FTAは、新興国の工業化と密接な関係があります。右に述べたEU、EFTA、NAFTAでは先進工業国が中心になっていますが、一般的には新興国(新興国と先進国、あるいは新興国同士)の関わるものが大部分を占めています。
    なお、FTAと似たものとして、EPA(経済連携協定)があります。これは、関税撤廃
    だけでなく、人の移動、知的財産権の保護、投資、競争政策などの幅広い分野での連携です。
    TPPの経済的効果はほとんどない
    TPPは2016年2月4日に署名されましたが、アメリカのドナルド・トランプ大統領が、就任直後に離脱の大統領令に署名しました。
    TPPに関しては、「最大の成長戦略である」とか、「デフレからの完全脱却を目指す日本にとって欠かせない課題」などという意見が見られます。しかし、仮にアメリカ離脱がなかったとしても、経済に大きな影響を与えるような効果は持ちえないものです。
    コメについては、日本は、1キロ341円というきわめて高率の関税を課しています。仮にこれを撤廃または削減するなら、日本の消費者にとっては大きな福音でしょう。しかし、TPPでコメの関税率を維持することは、最初から決まっていました。
    他方、アメリカが自動車に課している関税(乗用車2・5%、トラック25%、部品は大半が2・5%)については、どれだけを即時撤廃するかが問題とされました。これについては、部品の8割超の品目について即時撤廃し、全品目については、10年超の長期間かけて撤廃となるとされていました。
    部品の関税撤廃は、日本の輸出を増やす可能性があります。ただし、現在すでに、部品も含めて自動車の現地生産が主流となっています。こうした中では、関税率を引き下げたからと言って、輸出が大幅に増加することは考えにくいのです。
    以上のように、コメの輸入枠拡大と自動車の関税撤廃は、ともに日米経済にそれほど大きな影響を持ちえないものでした。
    では、全体としての効果はどうでしょうか?
    内閣府が11年10月に試算したところでは、TPP参加によるGDP押し上げ効果は、10年間で0・5%(2・7兆円)程度です。年平均でいえば、2700億円程度。つまり、「ほとんど効果がない」といってよい規模です。
    こうなるのは、GDPでみれば、TPP参加国のうち日本とアメリカでほとんどのウエイトを占め、両国間では(農産物等を除けば)関税障壁はすでにかなり低くなっているからです。
    世界に開かれた日本をめざせ
    TPPはもともと経済的な取り決めというより政治的な取り決めで、中国の太平洋圏へ
    の進出を抑止するのが目的です。中国はそれに対抗し、独自の経済圏を形成しようとしています。その手段が、中国が主導する国際金融機関AIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立です。
    日本の将来にとって最も重要な貿易相手国は、好むと好まざるとにかかわらず、中国にならざるをえません。ところが、TPPは、中国を排斥する「仲良しクラブ」です。その中に入ることの危険性を、われわれは真剣に考え直すべきです。
    日本にとって必要なのは、TPPやFTAのような閉鎖的クラブを結成してブロック化
    を進めることでなく、国内既得権益集団の抵抗を排して、人材と資本の面で日本を世界に向かって開くことです。つまり、BからCへと貿易政策を改めることが必要なのです。そのために、日本は具体的に何をすべきでしょうか?
    それは、農業と人材・資本面での開国をはかるということです。これは、FTAやTPPで行なうようなことではなく、日本が自ら行なうべきことです。これは国内の政治問題ですから、日本が一方的に自由化すればよいのです。農業が開国できないのは、農業
    や農家のためでなく、それを票田とする政治家がいるからです。そして、農林水産省や農協があるからです。





    | author : 山龍 | 12:00 AM |