山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

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  • 時事
    文部科学省の幹部が、私大支援事業への選定の見返りに自分の子どもを医学部の入試で
    合格させてもらったとして、東京地検特捜部に逮捕されました
    贈収賄は通常は金銭の授受を伴いますが、医学部への裏口入学というのは十分に
    経済価値がある行為ですから贈収賄が成立するというのが特捜部の判断です

    問題となった「私立大学研究ブランディング事業」ですが、全国から毎年180校ぐらいの
    応募があり、その中から60校が選ばれるという仕組みです
    この制度に関しては10人ぐらいの「事業委員会」というのがあり、大学教授や財界の
    メンバーが加わっています
    ですから、選定の権限が委員会にあって、逮捕された官僚が事務方に徹していたのであれば
    対象を選定する職務権限があるとは言い難いという見方もできます
    しかし、この事業委員会のメンバーには、助成金の対象に選ばれた私大の教員も入って
    いますから、委員会そのものが利害相反を抱える中で、事務局に事実上の対象校選定の
    職務権限があったのかもしれませんし、そもそも、委員の選定は文科省の官僚の差配です

    それ以上に不思議なのはこの「私立大学研究ブランディング事業」というものです
    年間55億円ぐらいの予算が計上されており、2016年からスタートして、既に2016年
    2017年と2回の対象校が決定されています
    何をするかというと、私立大学の「ブランド力を向上させる」ための補助金ということで
    とにかく大学の国際競争力や国内競争力を高めるために「研究活動」を強化したり
    あるいは「PR活動」を行ったりする、その企画を審査して選定するというものです
    日本の大学は人口減によって経営基盤が脆弱化する問題と、内部の改革が進まないために
    国際化が遅れ、国際社会での評価が上がらない問題、また企業に人材育成の予算がない
    なかで理系以外の人材にも即戦力教育が求められつつある、という背景があります
    本来であれば各専門領域で優秀な教員を招聘し、国際的に通用する人材を育てていく
    と同時に国際的に評価されるような研究成果を質量ともに追求してゆく、そのような
    正攻法の努力が従来にもまして必要とされると思いますし、大学に「ブランド力」
    というものがあるのなら、そのような正攻法の結果が「ブランド力」となって表れるもの
    でしょうし、そんなアヤフヤで見えないものを選定する官僚が霞が関に存在しているとも
    おもえません

    国内的な「ブランド力」というのも同じです。やがて、日本における大学と就職の関係も
    大学では即戦力的な実学を教え、就職の際にはその成果が問われるという流れになって
    いくでしょう。その場合には、大学で学んだスキルが採用につながるか、また就職後に
    現場で通用するのかが明らかになるわけで、学生や企業からの信頼というのはその教育
    の質として見える形になっていくと思われます
    ですから、看板学科の研究成果がニュースになるとか、大学のPR活動がデザイン的に
    どうとかといった表面的で薄っぺらなものでは「大学のブランド力」というのは伸ばす
    ことはできませんし、そのような情報が即時伝わる現代は、ますますそんなな時代に
    なっていると思われます

    本来はそうだと分かっていても、「教員の質向上」というような恒久的なコスト増要因に
    なる施策というのは、財源等の問題から難しかったのかもしれません。そんな中で
    とにかく各大学の衰退に歯止めがかかるような政策で、「恒久的ではないが効果が見込める」
    ものとして「ブランディング」という企画が浮上した可能性はあります
    分からないわけではありませんが、国費の使途としては、砂漠に水を撒くようで結果が
    見えにくく、税金の投入理由としては不適格です
    問題となった東京医科大学のテーマは「低侵襲医療」つまり患者の身体にメスを入れる
    ことをしない先端医療の研究で「世界的拠点」を作るというもので、仮に本当に真剣に
    取り組んでいるのであれば、各所から予算をかき集めようということで、焦りが生じた
    のかもしれません。そうではなくて、単に2000年代の医療事故などで低下した
    「ブランド力」を修復するのに国費を当てにしていたのであれば、相応の批判が
    されるべきでしょう
    アメフト部が問題になった日本大学も2017年に入選しています。こちらは「アンチ・
    ドーピングの研究拠点」作りというスポーツ関連の壮大な構想でしたが、日大の場合は
    「ブランド力」ということでは全く違う緊急性のある課題を抱え込んでいるわけです
    そんな中で、引き続きこの補助金が出ているのであれば、見直しが必要ではないでしょうか
    今回の事件では、官僚の贈収賄とか不正入試というのも問題ですが、こうした支援金の
    出し方ということ自体の見直しを含めた議論が必要で、単に官僚の汚職と言う枝葉を
    見るより、文科省や財務省の官僚が起こす問題は、どのようなインセンティブが働いていて
    問題になったのかを考え、インセンティブを消していく作業が必要ですし、当然そこには
    「財務省の解体」、「文科省の解体」も選択肢に入れなければなりません

    報道では、文科省は信用回復に努めているところでの事件で戸惑っているとか怒りが
    あるとか報じてますが、そんなことはどうでもいいのです
    大事なことは「忖度」などというマスコミが好きな単語ではなく、省益、私利に走る
    思考の力学を解明し、その力学を消滅させることです


    | author : 山龍 | 12:01 AM |