山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

2018年09月   <<前月 次月>>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
     
  • 今年のアベノミクス2018
    インフレターゲットを2%に設定したからと言って、インフレ率が2%ピッタリに
    なる必要はありません
    イングランド銀行では、インフレ目標のプラスマイナス1%以内であれば良く
    その範囲を外れると、イングランド銀行が議会などで説明する責任が生じます
    ただこれまでの日銀の目標に対する達成確率があまりに低過ぎることは問題です

    日銀の2%目標上下1%に収まった比率を見ると、この5年間(2013.4-18.3)で28%です
    例えば同じ期間で、FRBは72%、イングランド銀行は62%で、日銀の予測はかなりの
    確率で外れていますから、マーケット対話が必須の現在では改善が急務です
    もっとも、図1のように、その前の5年間(2008.4-13.3)では、日銀の確率は20%で
    以前に比べれば改善しています
    なお、その期間でFRBは53%、イングランド銀行は75%でした
    また、その期間(2008.4-13.3)で、日本のインフレ率は米、英と比べてそれぞれ2.3%、3.5%
    低かったのですが、最近5年間(2013.4-18.3)では、その数字はそれぞれ1.1%、1.1%
    まで縮まってきています






    このことは、外すにしても外れ具合はそれ以前ほどにはひどくなくなったことを
    意味していて、黒田日銀の前には、実際のインフレ率が大きく外れていましたが
    黒田日銀になってからは、それまで日銀が抵抗していた「インフレ目標」を導入した
    おかげで確率が改善されました
    つまり、黒田日銀以前はまったく当たらない空振り三振ばかりの日銀でしたが
    黒田日銀の政策は当たるかもしれない…と思わせてくれる空振りです(笑)
    日銀は速やかに、2%目標上下1%に収まる確率を、先進国では常識とされる
    70%程度まで引き上げねばならず、それに対応する金融政策を実行すべきで
    そうしなければ、以前の日銀と同じく国債市場で日銀の発言は信用されません

    具体的には、今の確率66%以上にかさ上げしなければいけないので、2%目標上下1%
    におさめることをあと2年程度は達成し続けるか、新たに金融緩和し2%以上の
    数値に引き上げるかの2択です
    そうなって初めて、今の異次元緩和策からの「出口論」という話になります

    他の先進国では、中央銀行が責務を負う『金融政策の基本に関わる雇用』の状況の分析でも
    日銀は相変わらずトンチンカンです
    2016年4月までの「展望レポート」では、「構造失業率」は3%前半と書いてましたが
    7月からは、「NAIRU」(インフレを加速しない失業率)ではないという言い訳を加えて
    その水準を引き下げています
    今回の「展望レポート」でも、「失業率は、足もとでは構造失業率をやや下回る2%台半ば
    となっている」としていることから、構造失業率を2年間で1%近くも下げていることに
    なり、では、1年前まで基準としていた数値は何だったのか何ら説明もありません

    日銀は「構造失業率」が「NAIRU」ではないと言うなら、日銀は「NAIRU」をいくらと
    見積もっているのかを明らかにすべきです
    さらに、これまでの構造失業率の推計の誤りを認めたほうがいいでしょう






    日銀は、「NAIRU」を明確に言わないだけでなく、インフレ目標に対する実際の
    インフレ率の確率の低さをほとんど改善せずに、インフレ目標の達成期限を
    ぼやかしているだけです
    確かに、黒田日銀になってからはその前に比べると、雇用の改善は明らかであり
    失業率が「NAIRU」近くになっています
    その結果、ようやく賃金上昇の動きも出てきています
    黒田日銀のパフォーマンスはそれ以前に比べると格段に良いのに、「NAIRU」を明確に
    言わないのは、画竜点睛を欠いていて残念というか、顔の見えない以前の日銀スタイル
    のままです

    最近では金利についても黒田総裁の会見は衒学的な言い回しが目立ちます
    物価目標達成時期の削除を決めた後の、5月10日の講演では「実質金利と自然利子率と
    いう2つの言葉が、これから日銀の政策運営で大事になっていく」と発言しました
    為政者がこうした衒学的な用語を使う場合は、一般の人を煙に巻き誤魔化したいだけです
    実質金利とは名目金利から予想インフレ率を差し引いたもので、文字通り、物価のの変動を
    考慮した実質的な金利のことです
    経済理論では、実質金利の動向が実体経済に影響を与えるのはイロハのイ
    実質金利が下がれば、設備投資は増加し、為替も円安になって輸出も増加します
    このため、実質金利が下がると雇用も拡大します
    一方で自然利子率というのは、スウェーデン経済学者であるヴィクセルが19世紀に
    言いだした言葉で、なにが「自然」なのかというと、完全雇用に対応するような
    実質金利という意味です
    金融政策の教科書では、中央銀行は実質金利を自然利子率にするようにしろと
    書いてあります
    ただし、自然利子率を聞いてわかるという人はほとんどいません
    今回も経済学者はわかったように説明してましたが、自然利子率はいくらなのかと聞くと
    ほとんど場合は答えをぐらかします
    また、完全雇用とはどのくらいの失業率の時なのかと聞いても、口を濁らせます
    要は、わかってないのです
    日銀にしても、「NAIRU」も言えなくらいですから完全雇用すらわかっていませんし
    自然利子率がいくらになるのかも言えないはずです
    ですから、金融政策の現実的なオペレーションは、自然利子率を目指すのではなく
    完全雇用まで金融を緩和し、完全雇用に達して物価が上がりだしたら金融を引き締める
    ということをやっています
    あえて、衒学的な言葉で言うと、『金融緩和は実質金利が自然利子率を下回っている場合に
    行われ、金融引き締めはその逆だ』となりますが、そうした専門をひけらかすような説明を
    わざわざする必要はなく、本来は市場への説明に伴う対話が目的の中央銀行の会見が
    わざわざ、日銀は実質金利と自然利子率を持ち出して、一般の人たちを煙に巻こうとして
    いるように見え、思慮深い海外マーケット筋は疑念を持ちました



    | author : 山龍 | 12:04 AM |