山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

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  • 今年のアベノミクス2018
    昨日の続き


    ここで、第一の仮説を簡単にまとめると、それは、統計上の失業率の数字は、定義上
    「Discouraged Worker」が含まれておらず、それを加味した「真の失業率」が依然として
    高く(これは経済全体の需給ギャップのマイナス幅も依然として大きいことを意味する)
    それゆえ、インフレ率が上昇する局面はまだ先である、というストーリーです
    しかし、既に述べたように、「真の失業率」の水準も実際の失業率の水準に肉薄しつつあり
    最近の「真の失業率」の動きを考えると、インフレ率も加速度的に上昇しなければならない
    はずですが、実際のインフレ率は加速するどころか、逆に減速の兆候を示しています
    もっとも、この非労働力人口の減少と就業者の増加は、「非正規労働」などの低賃金労働者
    の充足によってもたらされているので、日本全体からみた場合の賃金上昇が不十分で
    依然として高水準で推移している企業収益を労働者に分配していないために低インフレが
    続いているという見方もあります
    賃金データとして何を用いればよいかという点については様々な議論がありますが
    日本人全体の賃金のパイがどの程度拡大しているかという観点から、GDP統計の
    一種である「雇用者報酬」で賃金の状況をみてみます





    図表3は、インフレ率と(名目)雇用者報酬の伸び率の推移をみたものですが
    確かに両者は緩やかには連動して動いてはいるものの、その相関はそれほど高く
    ありませんない(両者の相関が最も高いのは、雇用者報酬が半年先行する場合で
    0.3554に過ぎない)
    特に、直近では雇用者報酬はそれなりに増加していますが、インフレ率は逆に大きく
    低下した後、ようやくわずかに上昇しつつある状況です
    また、インフレ率と労働分配率(企業が生み出した付加価値のうち、賃金等の形で
    労働者に分配される割合)の関係をみると、逆相関の関係にあることがわかります(図表4)





    すなわち、企業が労働分配率を引き上げる形で賃金を上げた場合、インフレ率は低下する
    可能性があるということです
    これは、一般的に企業が労働分配率が上昇するような事態に直面した場合、収益を
    確保するために、逆に雇用や設備投資を抑制するという行動をとるためです
    多くの企業が一斉にこのようなリストラを行えば、景気は悪化し、デフレ圧力が高まります
    特に、大企業などの上場企業は、コスト増による収益減は、株価低下要因になるため
    株主の突き上げを食らうリスクが飛躍的に高まります
    「労働者への再分配を高めるべきである」という一見、正論に思えるリベラル的な発想は
    企業のリストラ圧力の高まりから雇用機会の喪失等に波及するリスクがあるため
    かえって逆効果になりかねないということが大企業では当てはまります

    賃金(雇用者報酬)とインフレ率の関係を考えると、ここから企業が無理に賃金を引き
    上げたところで、それが、必ずしもインフレ率を引き上げるとは限らないということです
    また、賃金はようやく上昇し始めたばかりということもあり、単なるタイムラグの問題
    ではないか(すなわち、もう少し待てばインフレ率が加速度的に上昇し始める)という
    指摘もあり、ボクもそう思います
    例えば、GDPギャップ(失業率とほぼ同じ動き)とインフレ率の関係をみると、GDP
    ギャップが約2四半期先行しており、その相関も高いという話があります(内閣府の
    GDPギャップを用いると相関係数は0.536、日銀のGDPギャップを用いると0.694と
    特に日銀のGDPギャップとの相関が高い)
    しかし、5年で相関係数をローリングさせると、相関係数はかなり大きく変動します
    (期間を7年、10年にしてもほぼ同様)。これは、GDPギャップとインフレ率の関係は
    必ずしも安定的ではないことを示唆しています
    それと同時に、肝心の足元の相関係数はゼロに近く、最近5年のGDPギャップと
    インフレ率は無相関に近いことを意味しています
    従って、現在のGDPギャップの水準をもってして、将来のインフレ率の上昇を予想する
    ことは難しいとなります(図表5)





    それでは、インフレ率低迷の理由は何なのかというと、第一の仮説が棄却されたとなれば
    次には第二の仮説の可能性を考慮するべきで、第二の仮説では、失業率(正確にいえば
    経済全体の需給ギャップを意味するGDPギャップ)とインフレ率の関係が、人々の物価
    に対する将来見通し如何によって変わってくることが前提となります
    すなわち、何らかの要因で、将来もデフレが続くと考える人の割合が多ければ、たとえ
    失業率が低下し、GDPギャップがプラスに転換してもインフレ率はなかなか上昇して
    こない。この第二の仮説から考えると、現在もそれなりの割合の人の中に「デフレマインド」
    が棲み続けていることになります
    このデフレマインドを払拭させるのが、政府なり、日銀の最も重要な職務となりますが
    消費税増税は『さらなる冷や水』を掛けることになりますから、それに対応する方策は
    ① 増税の取りやめ、②消費税増税と同時に、すべての消費品目に軽減税率を適用
    ② 年3兆円から5兆円を3年、即ち、9兆円から15兆円の消費喚起の実弾となります

    理屈はこの通りなんです。他に合理的な理論はありません
    この先、5年後、10年後を見据え、ベーシックインカムの導入を含め、枝ではなく幹の
    改革が必要なことはバカでなかったらわかりきっていることです
    バカが多くて困ってるんですが(笑)


    | author : 山龍 | 12:06 AM |