山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

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  • 今年のアベノミクス2018
    昨日のブログを詳しく述べます

    今年に入ってからますます雇用環境の改善が加速している状況です
    例えば、3月の有効求人倍率は1.59倍、新規求人倍率は2.41倍
    バブル期をしのぐ数字です、有効求人倍率は1974年1月以来、新規求人倍率は1963年
    の調査開始以来、最も高い水準にあります

    リフレ派界隈では、「NAIRU(インフレを加速させない最も低い失業率の水準)」は
    2.5%近傍だという声が多いのですが、完全失業率は既に3ヵ月連続でNAIRUの水準に
    達しています
    NAIRUついては、反リフレ界隈、財務省は触れたがりません。外してばかりで
    バツが悪いんでしょう

    しかし、インフレ率は「生鮮食品、エネルギーを除く総合指数」でみた3月の
    全国消費者物価指数(CPI)は前年比+0.5%の上昇にとどまったままです
    さらに、全国のCPIの先行指標的な意味合いを持つ4月中旬時点の東京都区部の同指数は
    前年比+0.3%と、3月の+0.5%から減速しています
    このような「加速度的な雇用の改善と低迷するインフレ率」の組合せについて考えます

    第一の仮説は、「Discouraged Worker(職探しを放棄してしまっていた無業者)」の存在です
    第二の仮説は、「フィリップス曲線(縦軸にインフレ率、横軸に失業率をとって、両者の
    関係をプロットしたもの)」のシフト、特に、金融政策スタンスによる「期待」のシフト
    第三の仮説は、そもそも「NAIRU」は存在しない、というものです(笑)

    まず第一の仮説。結論から先にいえば、第一の仮説は棄却された可能性があるんじゃないか
    ということです
    ここでいう「Discouraged Worker」というのは、長引くデフレによって失職したり
    卒業後に就職できなかった人々が、労働意欲を喪失し、求職活動を放棄してしまった状況を
    指し、生涯賃金は平均の三分の一になるといわれています
    統計上、「失業者」とはハローワークで求職活動を行った者のことを指すため
    「Discouraged Worker」は失業者にカウントされません
    彼らは、「無業者」として、「非労働力人口」にカウントされています
    ただし、「非労働力人口」の中には、既に引退した高齢者や専業主婦、及び学生などが
    含まれるため、「非労働力人口」の数字だけでは、「Discouraged Worker」の数を把握
    することは困難です
    また、家計を支えなければならない事情を抱えている主婦もいれば、就職がなく大学院に
    進学した学生もいることが想定されるため、「非労働力人口」を専業主婦、学生
    「Discouraged Worker」に明確に分類することもできません
    ところで、就業者(働いている人)と失業者(求職活動をしている人)の合計が
    生産年齢人口(15歳以上人口)に占める割合のことを「労働参加率」というのですが
    日本の場合、大手金融機関の破綻が断続的に発生した1990年代終盤以降、労働参加率は
    急低下しています
    したがって、1990年代終盤以降の労働参加率の急低下は、「Discouraged Worker」の増加を如実に示していると推測でき、高齢化の影響を考慮しても間違いないと思われます
    この労働参加率ですが、1998年以降、ほぼ一方的に低下し続け、特に2000年の
    ITバブル崩壊以降はかつてない水準にまで低下してきました
    しかし、2013年に入ってから底打ち・反転を続けています
    これは紛れもなくアベノミクスの効果ですが、2018年に入ってから、これが急激に
    上昇しているという点です(図表1)。





    労働参加率急上昇の原因は、男女ともに、「非労働力人口」が急減し、彼らが
    「労働プール」に参入しているためです
    新たに求職活動を始めた人がいきなり希望職種に就くことができるわけではないので
    完全失業者が増加していますが、それでもその増加はわずかであり、完全失業率の
    上昇もない状況と言うのは驚異的です
    従って、本来は失業者にカウントされない「Discouraged Worker」が失業者にカウント
    された場合の「真の失業率」も加速度的に低下しています(図表2)





    3月時点で、この「真の失業率」の水準は4.7%程度ですが、これは、ちょうど
    デフレ初期である1990年代終盤の数字に近いものです
    すなわち、「Discouraged Worker」の調整を施した失業率でみても、雇用環境という
    側面ではデフレは終わりつつあるということに帰結します

    そこで、「フィリップス曲線(縦軸にインフレ率、横軸に失業率をとって、両者の関係を
    プロットしたもの)」が成立していると仮定した場合の「ありうべき」インフレ率を試算
    すると、実際の失業率を用いた場合は、前年比+1.65%、「真の失業率」を用いた場合は
    同+1.58%となりました
    図表2をみても明らかなように、労働参加率の急激な上昇によって、2つの失業率の
    ギャップは大きく縮小しています
    このことは、従来の雇用環境とインフレ率の関係がそのまま成立しているとすれば
    今頃、インフレ率は1.5~1.7%、すなわち、2%近傍まで達していてもおかしくはない
    ということになります
    そうなれば日銀も堂々と出口政策の議論を始めていたでしょう
    ひょっとすると、消費税率の引き上げにも多くの国民は同意していたかもしれません
    しかし、残念ながらインフレ率が0.5%近傍で停滞しているということは、第一の仮説が
    成立しない可能性を示唆しているということです


    | author : 山龍 | 12:04 AM |