山龍ブログ - 誰にも文句言わせへんで!コラム

2018年06月   <<前月 次月>>
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
     
  • 時事
    昨年末にユーロの問題を数回取り上げましたが、ドイツのメルケルの落日に呼応
    したように、EUでも新たな動きがあります

    財政規律絶対主義という宗教のように主張するドイツのメルケル首相の信念は
    揺らいだかどうかはわかりませんが、昨年末のユーロ圏財務相会合の新議長に
    ドイツが推薦したのはポルトガルのセンテーノ財務相です
    同会合はもともと、ユーロ圏の財務相が非公式に話し合う場として設けられましたが
    現在は国家予算の草案や救済計画まで、幅広くチェックする会合になりました
    組織として透明性に欠ける、非民主的という批判はあるものの、議長はユーロ圏の
    発展において重要な存在と見なされるようになっています

    米ハーバード大学卒でポルトガルの社会党政権を支えるセンテーノ氏は
    18年1月にポルトガルの政権を離脱し、オランダのデイセルブルム前財務相の後任として
    財務相会合の議長に就任しました
    デイセルブルム前財務相は、ここ数年ドイツと歩調を合わせ浪費傾向が強い南欧諸国を
    非難し続けていたので、ユーロ圏の北部と南部の分断を招きました
    センテーノ氏の登場は、そうした流れの方向転換を意味します
    ポルトガルは10年からのユーロ危機に際し、ユーロ圏から780億ユーロの緊急融資を
    受けました。センテーノ氏は債務国の代表であり、注目すべきなのは共産主義政党の
    後押しを受けた左派政権の一員でもあるということです
    ポルトガルの連立政権は北部欧州の債権国と、トロイカ(ECB〔欧州中央銀行〕、EU、IMF)
    からの緊縮命令に抵抗し、それでも債務危機からの脱出に成功しました

    センテーノ氏を推薦したことがドイツの経済方針の転換の表れであるかどうかは
    政権が定まらないドイツの状況ではわかりませんが、2年ほど前はユーロ圏きっての
    緊縮財政派であるドイツのショイブレ前財務相は、ポルトガルに対しユーロ圏の規制に
    従うことを拒めばポルトガル経済は停滞して追加の国際融資が必要になると
    クギを刺した経緯があります
    しかし、ポルトガルは警告に従うことを慎重に拒否しながら、ショイブレ独前財務相を含む
    緊縮財政派から称賛される結果を出しつづけました
    要するに、ポルトガルは財政危機に苦しむ国が、ドイツから課された緊縮財政に逆らっても
    十分やっていけることを、国内外に証明したのです

    センテーノは左派政権の財務相だからEUで急進的な政策を進めるはずだと考えるのは
    いささか短絡的で、彼は新議長として金融危機を通して重要度を増していった組織に
    おける職務を果たし、ユーロ圏諸国の改革の陣頭指揮を執ると予想され、ドイツ色の
    薄れた経済ガバナンスを行う未来が来る可能性が出てきました
    EUでは、センテーノ氏もポルトガル政府もそんな可能性の象徴と見なされています
    ポルトガルは南欧で先陣を切って債務危機から抜け出て、近年は急速な経済成長を続け
    失業率も13年の17.5%から8.5%にまで低下しています
    ポルトガル政府は着々と債務を返済する一方で、年金や公務員給与の削減措置を撤回
    水道局や鉄道会社などの民営化を停止し、祝日数も元通りにしました
    これは左派だからと言うより、財政破綻寸前まで行って動揺が広がる国民に「前のまま」
    何も変わりませんよと言うメッセージの意味合いが強かったと思います
    さらには、トロイカから非難されながらも最低賃金を上げ、増税案を破棄し貧困世帯への
    社会保障を大幅に増やしました
    その間、EU幹部の脅しめいた忠告が何度もありましたが、これらの措置によって
    ポルトガルの内需と投資は16年に完全復活します
    経済成長も安定し、17年9月には国の信用格付けは5年半ぶりに投資適格級に復活
    まさに不可能とEU首脳から言われていたことを成し遂げたのでした

    この件に関して日本で報道が無いのは、皆さんが思われる通りです(笑)
    成長が財政再建を促進した事例など報道すれば、せっかく消費税を上げられると
    喜んでいる財務省や、国民に負担をかけ軽減税率の適用を得ようとする新聞社は
    ぬか喜びになるかもしれず、そんな都合悪いニュースは黙殺して報道しない
    と言うのが、日ごろから公正ぶってる日本のマスコミのスタンスですが
    いずれにしても、財政規律や緊縮財政という中世から続く悪魔教のような思考は
    隅に追いやられ、成長重視の金融・財政政策という当たり前の政策が世界の潮流になっています


    | author : 山龍 | 12:00 AM |