アーティザン「匠」 - 山龍作品に見る職人技の妙

140の楽器が奏でる協奏曲

本疋田

本疋田絞り・秋風

本疋田絞り・秋風

白生地を絞ったままのものを『白目(しろめ)』といいます。アップで見ると、一粒一粒が絹糸でしっかりと巻か、粒がきれいに並んでいるのがわかります。見事な職人技です。

白生地を絞ったままのものを『白目(しろめ)』といいます。アップで見ると、一粒一粒が絹糸でしっかりと巻か、粒がきれいに並んでいるのがわかります。見事な職人技です。

布に立体感を与える独特の技法「絞り」には、「竜巻絞り」「豆絞り」「四ッ巻き絞り」「人目絞り」を始め、いろいろな種類がありますが、その中でも最も細かく繊細で高度な技術を必要とし、手間がかかるのが「本疋田(ほんびった)」(別名:京鹿の子絞り)です。“疋田”とは、田んぼに線を引くという意味で、絞りの一目を田んぼに見立て、その数が多いほど高級とされました。疋田は唯一、日本独自の技法です。

左手の薬指の爪をV字にカットし、そこに絹地を挟み込みます。つまんだ生地の先を三角に折り、絹糸を7〜8回巻いて括ったものを、布目に対して斜め45度に粒を揃えて、びっしりと生地を埋めていきます。その数、1尺(約40cm)の間に45粒〜70粒! 着物1枚で、18万粒〜26万粒にもなるという神業です。

絞った状態の生地を染め、125度で蒸した後に糸をほどくと、四角い立体的な粒が細かく浮き上がった、非常に豪華で優雅な本疋田が完成します。立体的な分、空気をたくさん含むため、保温力に優れ、また、絞りの中でも圧倒的に細かいので、非常に表情豊かで優雅なドレープが出ます。そのあまりの豪華さに、徳川時代には『奢侈禁止令(しゃしきんしれい)』という贅沢品禁止令により、徳川御三家以外は着ることを禁止されたといいます。

疋田の歴史は平安時代にさかのぼり、京都の大原の農家で、冬の豪雪の間の内職として発達した技術です。働き者の女性は、8歳〜10歳の頃から疋田の技法を親から学んだといいます。現在では、ほんの数人の職人しか残っていません。


本疋田絞り・木立ち
本疋田絞り・木立ち(ほんびったしぼり・こだち)

本疋田絞りは、一粒一粒の絞りが細かい上に深いので、尖った先だけしか染まらず、白地の部分が多いのが特徴。糸で括るので、染織学的には『刺繍』のカテゴリーに入りますが、日本では、『染め』として認識されています。

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