アーティザン「匠」 - 山龍作品に見る職人技の妙

140の楽器が奏でる協奏曲

切裂

布と布を継ぎ合わす「切裂(きりばみ)」。ヨーロッパでは似た技法として、パッチワークやアップリケなどがありますが、日本の切裂は生地をくり抜いて木目込みをしたものを、生地の裏から縫製します。茶道の茶碗や棗を包む仕覆(しふく)と呼ばれる巾着などの小物から始まったものです。千利休が織田信長への手みやげとして、城下町の楽市楽座で買った安い唐津焼の椀を、正倉院から持ち帰った古裂(こぎれ)を接ぎ合わせた巾着で包んで献上したのが、仕覆道の始まりと言われています。

「切裂」の帯や着物は、腕の良い職人にしか作れないため、通人の中で珍重されてきました。年間制作数が数点しかありません。難しいのは型紙作りで、土台になる生地を切り抜く型紙と、はめ込む生地の型紙を、縫いしろも含めて作るのは、特に尖ったエッジの部分など、神業的なものがあります。また、厚みや質感の違う異素材を継ぎ合わせるので、伸びやシワを計算しなければなりません。伸びやすい生地は、裏に不織布を貼り、伸びを抑えます。切り抜いて縫い目が見えないように、シワが出ないようにきれいに縫い合わせるは至難の技なので、現在職人は5人ほどしか残っておらず、「切裂」の作品を作っているのは山龍の工房だけです。

どんな生地をはめ込んでいくかは、作り手のセンス。刺繍とはまた違ったメリハリや立体感が作り出せ、例えば織物の中に絞りをはめ込むなど、普通だったら一つの生地の中では表現できないことが可能になるので、大いに創作意欲のわく作品だと山龍は言います。

山龍の「切裂」は、完成度の高い小袖(こそで)の古典柄にこだわり、敢えて「切裂」として現代に復元することで、大仰にならずにモダンで粋な作品となっているのが特徴です。

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切裂袋帯・笹に雪輪松竹疋田

(写真)切裂袋帯・笹に雪輪松竹疋田(きりばみふくろおび・ささにせつりんしょうちくひった)

切裂袋帯・葡萄に重ね菱辻が花

(写真)切裂袋帯・葡萄に重ね菱辻が花(きりばみふくろおび・ぶどうにかさねびしつじがはな)

切裂袋帯・梅樹文様

(写真)切裂袋帯・梅樹文様(きりばみふくろおび・ばいじゅもんよう)


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